副業を考えている人は利用しないと損 ! 「教育訓練給付制度」

大手を中心に2016年解禁された「副業」。働き方改革にともない、中小企業でも「副業」を認める会社がでてきました。「いずれは副業をはじめたい」と思っている人に、ぜひ知っておいていただきたい制度が「教育訓練制度」です。

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教育訓練給付制度ってナニ?

教育訓練給付制度についてざっくり言うと、職業能力のアップや資格取得を目的として受講したときに、受講料として支払った費用の一部を国(ハローワーク)から援助してもらえるという制度です。もう少し詳しく言うと、この援助されるお金は普段給料から引かれている雇用保険から出るものです。雇用保険なんて失業したときにだけもらえるものと思っていた人は多いかもしれませんが、実は今現在働いている人も雇用保険からお金をもらうことはできるのです。

それはさておき、当制度の目的は「働く方の主体的な能力開発の取組み又は中長期的なキャリア形成を支援する」こと。国がひとり一人のキャリア形成についても支援してくれているということですから、積極的に自分の職業能力を高めていきましょう。

教育訓練給付制度には2種の制度があります。職業能力をアップしようとする人を応援する「一般教育訓練給付金」と、より高度な資格取得を目指す人を応援する「専門実践教育訓練給付金」です。それぞれ、支給される対象者や支給要件などが異なります。

対象となる資格や講座があります !

職業能力アップを目的とする「一般教育訓練給付金」と、より高度な資格取得を目的とする「専門実践教育訓練給付金」。いずれの場合も、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了することがまず1番の条件です。働いているとなかなかスクールに通うのが難しいという人もいるかもしれませんが、受講は通学に限られず、通信教育やEラーニングでもOKです。

その中からどんな種類の講座があるか、いくつかピックアップしてみましょう。

〈一般教育訓練給付金〉
・簿記能力検定などの経理関係
・TOEIC、中国語検定、フランス語検定などの語学関係
・税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどの専門資格関係
・情報処理技術、パソコンインストラクターなどの情報関係
・カラーコーディネーター、ソムリエ、フードコーディネーターなどのサービス関係
・介護福祉士、保育士、看護師、栄養士などの社会福祉・保健衛生関係
など

〈専門実践教育訓練給付金〉
・キャリアコンサルタント、看護師、歯科衛生士、はり師、建築士など業務独占資格の養成訓練
・MBAなど大学・短期大学などでの専門学科課程
・旅行、デザイン、服飾など職業実践専門課程
・クラウド、IoT、AIなどの度情報通信技術関係
など

なんとなく気になっていた資格がある!という人もいるかもしれませんね。このほかにも、今の仕事や将来のキャリア形成に役立ちそうな講座や資格がたくさんあります。オンラインの「厚生労働大臣教育訓練講座検索システム」から対象となる講座を検索できますから、自分の興味がありそうな講座を探してみましょう。

教育訓練給付制度:対象講座「ソムリエ」
ソムリエも教育訓練制度の対象講座です。

教育訓練給付金をもらうには、条件があります。

教育訓練給付金は雇用保険から支給される制度ですから、雇用保険への加入が条件です。在職者と離職者、また一般教育訓練給付金か専門実践教育訓練給付金かで加入年数に関する条件が異なります。少しややこしいので、表にまとめてみました。

 

一般教育訓練給付金 専門実践教育訓練給付金
初めて給付金を受ける場合 支給要件期間が1年以上 支給要件期間が2年以上
2回目以降 在職者 受講開始日時点で支給要件期間が3年以上
離職者 離職日の翌日から受講開始日までが1年以内(※)かつ、支給要件期間が3年以上

支給要件期間とは雇用保険への加入期間のことをいいます。はじめてもらう場合には、「一般」ならば雇用保険への加入期間が1年以上あることが条件ですから、社会人になって2年目以降の人ということになります。「専門」ならば社会人になって3年目以降の人と考えておけばいいでしょう。

なお、教育訓練給付制度は1度だけではなく、条件を満たしていれば何度でももらうことができます。ただし、2回目以降にもらう場合の支給要件期間は単なる雇用保険への加入期間ではありません。「前回の受講開始日以降、3年以上雇用保険に加入していること」とされていますので注意してください。一度もらったら3年おきに使えると考えておくといいでしょう。

なお、表中に※印で示しましたが、離職後1年間のうちに、妊娠、出産、育児、疾病、負傷等の理由で引き続き30日以上受講が開始できない日があるケースもあります。その場合、ハローワークで手続きすれば受講できない日数分最大19年まで延長することが可能です。

教育訓練給付金はいくらもらえる?

一般と専門では受給できる金額が異なります。

〈一般教育訓練給付金〉
資格取得や勉強にかかった費用(教育訓練経費)の20%に相当する金額を最大10万円限度に受給できます。ただし、20%に相当する金額が4,000円未満の場合は支給されません。

たとえば、TOEICの受講講座を受けるとしましょう。ある受講講座では入学金と受講料を合わせて30万円程度かかります。この場合、30万円の20%は6万円が支給されることになります。

ただし、支給されるのは受講修了後。一旦30万円を全額自己負担しておいて、受講修了後にハローワークに申請してから6万円を支給される仕組みです。受講期間が数カ月と長いものもあり、受給までに時間がかかる場合も多いですが、勉強を頑張ったご褒美と思えば嬉しいのではないでしょうか。

〈専門実践教育訓練給付金〉
資格取得や勉強にかかった費用(教育訓練経費)の最大70%に相当する金額を受給できます。一般教育訓練給付同様、支給相当額が4,000円未満となる場合は支給されません。

専門実践教育訓練給付では、一般の場合と異なり、「受講中」と「修了後」の2段階で支給されます。

・受講中:教育訓練経費の50%相当額
ただし、受講期間により上限があります。受講期間が1年の場合は40万円限度、2年の場合は80万円限度、3年の場合は120万円限度です。

・受講修了後:教育訓練経費の70%相当額から受講中に支給された、既払い分を差し引いた額が支給されます。
ただし、資格取得等をし、かつ修了した日の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合に限ります。この場合にも受講期間により上限があります。受講期間が1年の場合は56万円限度、2年の場合は112万円限度、3年の場合は168万円限度です。

なお、教育訓練経費とは資格取得や勉強にかかった費用のことを言いますが、スクールに通うための交通費などは含まれません。他にもさまざまな注意点がありますので、ハローワークや講座の教育機関などに事前に確認しておきましょう。

働く女性が教育訓練給付制度を活用したい理由

性別にかかわらず個々のスキルや適応性に合わせ、さまざまな職やポストに就ける可能性が広がっている昨今ですが、結婚、出産、育児など、ライフスタイルの変化で今のキャリアを一旦休止しないといけなくなる可能性が高いのは、男性よりも女性の方が多いのが実情です。

一旦職場を離れると、社会復帰への壁にぶつかる人も少なくありません。実は筆者の知人のある人事担当者から聞いたことがありますが、働き方改革などで今多くの企業は採用の門戸を開いているが、復職者の採用は難しい場合も多いのだとか。理由はさまざまありますが、ひとつには過去の職業経験にこだわる人が多いとのこと。時の流れとともに仕事のやり方も変わってくるのは、いま現職で働いている人なら感じているでしょう。

そこで、仮に一旦職場を離れても、女性が長く働き続けられるよう幅広いスキルを持っておくといいかもしれません。これまでの経験を活かしながら、教育訓練給付制度で新たに知識や資格を修得することで、あらたなキャリアを形成していくことはできるでしょう。

もちろん新たに知識を得ることは、職場復帰のためだけではありません。今の仕事は続けたいけど、違う仕事もしてみたいというのは多くの女性が考えているはず。どんどん副業が解禁されている昨今、そんな思いが実現できそうな時代になってきています。とはいえ実現するには知識も要りますし、場合によっては資格が必要なこともあります。そんな夢を叶えてくれそうな教育訓練給付制度、上手に活用しない手はなさそうですね。

 

※記事の情報は2019年9月27日時点のものです。

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