ネパールの家庭の味「ダルバート」の人気上昇中! その魅力や味わいに迫ります!

この記事のライター:田嶋章博田嶋章博

今、ネパールの家庭料理「ダルバート」を提供するお店が続々と増えています。「ダルバート」とはどんな料理なのか、その食べ方や日本で広まっている理由などについて、「東京ダルバートMAP」を運営するライター田嶋章博さんに解説していただきました!

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ネパール料理「ダルバート」のお店が増えている!

ナマステ(こんにちは)。ビジネスとカレーのライターという肩書きで執筆活動をしている、田嶋章博と申します。今回は、僕がここ数年来、おみそしるよりもはるかによく食べているネパール料理「ダルバート」を紹介しますね。

ダルバートを提供するお店は、ここ10年ほどで相当に増えています。今や東京では、確認できているだけでも300軒以上。ダルバートの知名度は、まだ決して高いとはいえませんが、意外と身近で食べられる存在になっているんです。

ダルバートとはどんな料理?

ピプレーのダルバート(東京都文京区春日)
ピプレーのダルバート(東京都文京区春日)

ダルバートとは、豆のスープとご飯がセットになった、ネパールの「定食」です。ダル(ダール)は「豆」、バートは「ご飯」の意味で、ダル(豆スープ)+バート(ご飯)で、ダルバートというわけです。

豆スープとご飯を基本の構成としつつ、そこに漬物や炒めもの、カレーといったおかずが付くことが一般的。その点は、ご飯とおみそしるをベースにさまざまなおかずが付く、日本の定食にも通じますね。

ダルバートの味わいは?

ダルバートの味わいの大きな特徴は、家庭的な「やさしさ」にあると思います。

ネパールにおいてダルバートは“家庭料理”の立ち位置で、ネパール人はこれを昼と夜の1日2回ほど食べるのが一般的だそうです。味わいは家庭料理というのもあってか、スパイスのとがりが少なくて、おだやか。また、素材から出る“ダシ”のようなうまみが効いているのも特徴です。加えて野菜が中心で、油の量も少なめのため、量を食べすぎなければヘルシーでもあります。

これだけ聞くと日本の家庭料理のようにも思えますが、とはいっても、そこはやはり南アジアの料理です。それなりにスパイスは効いていて、辛いおかずもあります。日本の家庭料理にも通じるやさしさ・うまみ・ヘルシーさと、エスニック料理のほどよい刺激を“いいとこ取り”したような塩梅が、ダルバートの何よりもの魅力だと個人的には思います。

なぜ今、ダルバートを出すお店が増えている?

「東京にダルバートを提供する店が300軒」は、なかなかインパクトのある数字です。なぜこれほど、ダルバート提供店が増えたのでしょう?

ダルバートを出す店は、「インド・ネパール料理店(インネパ店)」と「ネパール料理専門店」の2つに大別できます。

インネパ店は、ネパール人経営のインド料理店のことで、1980年にブームとなった高級系インド料理店にコックとして招かれたネパール人が、その後独立して始めたのがルーツといわれます。その後インネパ店は、そのビジネスモデルがネパール人の間で人気となり、2000年以降激増します。ただ、以前はインネパ店のメニューにダルバートが載ることは、「売れない」「レストランで出すようなものではない」といった理由でほとんどありませんでした。

一方、2010年に新大久保にできた「モモ」の成功をひとつのきっかけに、ダルバートをはじめ純粋なネパール料理をウリにするネパール料理専門店も、モモ以降多く登場しました。あわせてこの流れを受け、インネパ店のなかでも、ダルバートを提供する店が増えていった。こうした要因があわさる形で、“東京に300軒超”という数字が生まれています。

ダルバートの基本の中身は?

ラトマトのダルバート(東京都新宿区新大久保)
ラトマトのダルバート(東京都新宿区新大久保)

それでは、ダルバートを構成する各要素を紹介しましょう。

・ダール
豆を煮込んだスープ。ウラド豆、レンズ豆、ムング豆などのひき割り豆をミックスして使うことが多い。

・バート
ご飯のこと。日本のお店では、細長いインディカ米と、日本米などのジャポニカ米をミックスすることが多い。

・サーグ
ほうれん草をはじめとする青菜を炒めたもの。

・タルカリ
スパイスで味付けした野菜のおかず。ただ、肉のカレーを含めたおかずの総称をタルカリと呼ぶ場合もある。

・アチャール
大根の発酵漬物「ムラコアチャール」や、トマトをペースト状にした「ゴルベラコアチャール」など。辛味や酸味を加える役目。

・カレー
→チキン、マトン、ポーク、野菜などが一般的。スープ状のサラサラタイプが多い。

ダルバートの食べ方

続いては、ダルバートの基本的な食べ方です。

① まずはそれぞれの味を味わう
各おかずを単体で食べたり、ご飯と食べたりして、味の特徴をつかむ。

② 思い思いに混ぜる
ダールをご飯にかけ、そこにおかずを好きなように混ぜる。これにより、味のバリエーションが無限に広がる! 最終的に“全混ぜ”するのもアリ。

③ ダールをおみそしる的に飲む
ダールはご飯にかける“かけ汁”のやくめの他、ひと口の最後にスープ的にすする“おみそしる”的役目も担う。

④ 辛さはアチャールで調節
他のおかず類はそれほど辛くないので、辛味などの刺激はアチャールで調節。オプションで、ポリポリかじる用の青唐辛子をいただける場合も。

ちなみに、ダルバートとミールスの違いは?

南インドのミールス
南インドのミールス

ダルバートはパッと見、近年人気の南インド定食「ミールス」とも似ています。この二つは、どう違うのでしょう? 違いをいくつか挙げてみました。

違いその① 
“基本の豆スープ”の味わいがかなり違う
ミールスにはたいてい、サンバルやラッサムという“基本の豆スープ”が付きます。どちらも酸味や辛味が立っていて、酸味や辛味がほぼないネパールのダールとは味わいがかなり違います。

違いその② 
ミールスには、南国らしい素材が使われる

ミールスは、ネパールよりだいぶ南方に位置する南インドの料理だけに、ダルバートではあまり使わないココナッツやタマリンドといった南国らしい素材をよく使います。またミールスは、バナナの葉をお皿にすることがありますが、ダルバートをバナナの葉で食べることはそうありません。

違いその③
ミールスは、味わいがパキッとしている

ミールスの各おかずは、スパイスやハーブの風味、酸味、辛味などがくっきりしている印象があります。対してダルバートのおかずは、それらの要素が比較的おだやかです。

ダルバートは食べ比べが楽しい!

ディディバイのダルバート(東京都荒川区西日暮里三河島)
ディディバイのダルバート(東京都荒川区西日暮里三河島)

ダルバートの味わいやスタイルは、お店によってさまざまです。ぜひ、いくつかのお店をめぐって、食べ比べてみてください。食べ歩くなかで、ネパール人の気質や伝統文化ともふれあえ、きっと楽しい“プチ旅行”になるはずです。

東京で食べ歩くなら、東京にある300軒以上のダルバート提供店をグーグルマップ上にまとめた「東京ダルバートMAP」も、ぜひご活用くださいね。


※この記事の情報は2023年11月10日時点のものです。

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