「16時間ダイエット」のメリットやデメリットとは? 管理栄養士が考える、効率の良いやり方も紹介!

「16時間ファスティングダイエット」は、特別な準備などをせず手軽にできるダイエットとして人気です。そんな16時間ダイエットのメリットやデメリットを管理栄養士の視点から森由香子先生が解説。さらに健康的に実践するやり方のコツも教えていただきました!

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これまでいろいろなダイエット法がネットやテレビで紹介されてきましたが、人気のあったダイエット法というのは、総じて簡単で取り組みやすいという共通点があると感じています。忙しい私たちは、日々の仕事や生活に追われていますので、シンプルでわかりやすいダイエット法を求めがちなのは当然なのかもしれません。

今回は管理栄養士の視点から、「16時間ファスティングダイエット」について考えてみたいと思います。

16時間ダイエットのメリットは?

近年TVや雑誌、SNSでも話題となっている「16時間ファスティングダイエット」をご存じでしょうか? 1日の中で何も食べない時間を16時間作り(睡眠時間は含めてOK)、残りの8時間は何を食べても良いというダイエット法です。シンプルなルールが受け入れやすく、また期待できる恩恵が大きいことから人気になっているようです。

例えば、16時間に渡り休めることで内臓が活性化し、基礎代謝アップにつながったり、美肌や免疫力を高まる効果が挙げられています。また、何よりも注目を集めている効果として、オートファジーの活性化があります。

オートファジーとは、細胞の中の不要なものを細胞自体が取り除き、新しいたんぱく質をつくるシステムのことです。不要なたんぱく質は細胞に溜まると、細胞が衰えて体の不調や病気の原因をつくると考えられています。16時間ファスティングダイエットをするとこの細胞の修復機能がオンになり、アンチエイジングが期待できるというものらしいのです。本当に実現したら嬉しいですね。

16時間ダイエット、栄養管理士が体験談から感じたデメリットは?

夜食

これまで私の栄養指導に来られた会社勤めの方々からも、16時間ファスティングダイエットを実践しているというお話を聞く機会が度々あります。生活リズムや食事のとり方はそれぞれですが、ほとんどの方が朝食を抜いていると話されていたのが印象深いです。1日の最初の食事が昼以降、そこから仕事を終えての最後の食事が22時や23時の遅い時間になるパターンで、そこから16時間となると、どうしても朝食を抜かざるを得ないという状況のようです。

そんなお話を聞く中で、私が16時間ファスティングダイエットで少し心配になったことが3つほどありましたのでご紹介します。

まずひとつめは、朝食を抜いていることです。

朝食を食べないデメリットは、実はたくさんあります。体内時計がリセットされなかったり、エネルギー代謝が円滑に進まない可能性があったり。食事誘発性熱産生も減るので体温が上がりにくく、1日の消費エネルギー量も増えにくいです。また、朝食抜きは多くの研究から肥満やメタボになりやすいことが判明しています。

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2つめは、夕食が遅い時間になっていることです。

遅い夕食の時間帯は、副交感神経が優位となり脂肪が溜まりやすくなります。さらに、夕食から睡眠までの時間が2時間以内と短いのであれば、摂取したエネルギーが使い切れずに脂肪となり、体に蓄積されやすくなります。時間栄養学の観点からも、細胞実験においてですが、肥満に関わる時計遺伝子の働きが活発になり脂肪細胞に脂肪を溜め込むことが促進されることが判明しています。

そして3つめは食事量の増加、つまり摂取エネルギー量が増えていることです。

16時間のファスティング明けは、強い空腹感に勝てずたくさん食べてしまう方が多く、しかも高カロリーの料理を選んで食べてしまう傾向があるようです。暴飲暴食は、急激な血糖値上昇を招きやすく、それにより過剰に出たインスリンは脂肪をつくる働きがありますので体重は増えやすくなってしまいます。

ちなみに先ほどお話した栄養指導に来られた方々の16時間ファスティングダイエットによる体重の増減結果ですが、食事をいつとっているか、そしてどれぐらい食べているかで明暗を分けていました。8時間の中で朝食をとり腹八分目に食事量を抑えていた方は体重が減っていましたが、そうでない方の体重は減るどころか増加していました。このことからも、16時間ファスティングダイエットは、食事の時間帯や内容によって逆効果になってしまう場合があると言えそうです。

16時間ダイエットの健康的なやり方のコツは?

食事風景

日中に仕事をしている人が16時間ファスティングダイエットをすると、朝食の欠食、遅い時間の夕食というパターンに陥りやすくなります。しかし、昼食から夕食にウエイトを置いた食事は、朝食から昼食にウエイトを置いた食事に比べ、体が本来持つ生体リズムを乱し、肥満の原因や健康に悪影響を及ぼす可能性が高くなることが推察されます。

そうならないように16時間ファスティングダイエットをするならば、体内時計が司る生体リズムに合わせながら8時間以内に適正エネルギー量を摂取し、食事をすることができれば良いと考えられます。ただ実際は、朝食を7時に食べて15時にその日の食事をすべて終えるのは、日中仕事をしている方にとってはハードルが高いかもしれません。

そこで私のおすすめは、16時間のファスティングではなく、少なくとも10時間、10~12時間のファスティングを心がけるということです。起床後1~2時間以内に朝食をとり、12~14時間以内に3食の食事を終えるようにしてファスティング時間を10~12時間つくるのです。

10時間は少ないと感じる方もいるかもしれません。しかし、時間栄養学の研究によれば、絶食時間が少なくとも10時間あれば体内時計のリセット効果が高くエネルギー代謝が円滑に進むと考えられています。そのため体重を減らしたい場合、ファスティング時間を16時間作ることを優先するのではなく、朝食をしっかり食べ、夕食は早めに食べ終わるように心がけることを意識していただきたいです。

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体重の増減は、結局のところエネルギー収支バランスです。摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回れば体重は増えますし、逆であれば減るものです。どんなダイエットを始めるときでも、エネルギー収支バランスが体重を決めることを忘れないで実践してほしいと思います。

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※記事の情報は2024年4月12日時点のものです。

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