水や食料の備蓄を始めたいあなたに。女性のための飲食料備蓄を防災士が解説します
防災に欠かせない食料や水など備蓄の用意。いざ準備しようとすると、何をどのくらい用意したらいいのか悩みますよね。この記事では、防災士が女性のための家の飲食料備蓄について、必要な量や選び方のコツ、無駄にしないストック方法まで丁寧に解説します!
備蓄は自然災害時以外でも心強い存在
災害に備えて、あなたは食料や水の備蓄をしていますか? 食料や水の備蓄は地震や台風などの自然災害だけでなく、新型コロナウイルスやインフルエンザに罹患して外出できなくなったときや、一人暮らしの方なら急に熱が出たときなどにも役立ちます。
体調不良のときは家族と同居していたり、近くに知人がいれば助けを求めてカバーすることもできますが、大きな震災が起きたときには、自分のことは自分で守らないといけない状況に陥る可能性もあります。
災害対策には、自助(自分で対応する)・共助(地域で対応する)・公助(国や自治体などが対応する)があり、私たちが今すぐにできるのが自助なのです。
例えば2020年時点で今後30年以内に高確率で発生すると言われている、首都直下地震(70%の確率)や南海トラフ地震(70~80%の確率)が起こった場合、広範囲での大きな被害が予想されます*。首都直下地震が懸念されている東京都の場合、2022年のデータでは用意されている避難所が約3,200か所、収容人数は約320万人となっています。東京都の昼間人口は約1,557.6万人、夜間人口は約1,315.9万人ですから、避難所に収容可能なのは人口の5分の1程度ということになります。
*参照:国土交通白書2020
そのような状況を踏まえ、東京都では2023年に「地域防災対策計画」を一部修正し、避難所を頼るのではなく「大きな災害のときに倒壊や浸水の恐れがない状況ならば在宅避難を」と呼びかけています。もちろん東京都だけでなく、地震の多い日本において自分の身は自分で守らなければなりませんから、自宅に食料や水の備蓄はしておくに越したことはありません。
3日分では足りない? 水と食料は7日分の備蓄を!
備蓄の量について、近年は「最低でも3日分、できれば7日分」が推奨されています。
実際、震災などが起きた後の報道を見ていると、災害発生から3日程経過しても満足な量の食料や水が行き渡っていないことがお分かりいただけると思います。広範囲での巨大地震になればなるほど、食料や水が届くには日数がかかります。そのため「できれば7日分」ではなく、「最低でも7日分」の食料や水の備蓄を考えておいたほうが良いでしょう。
女性ひとり分の「飲料水」の目安備蓄量と選び方のコツは?
1人が生きていくのに必要な飲料水は1日に2リットル、生活用水と合わせると3リットルと言われています。3リットル×7日分で計算すると、備蓄しておきたい水の量は21リットルです。
市販のペットボトルの水は、2リットルのペットボトル6本で1箱や、9本で1箱という形式が多く、21リットル分となるとこれを2箱積んでおけばいいのです。想像していたより省スペースで備蓄することができると思いませんか?
備蓄用飲料水は、価格が高い長期保存水でなくても構いません。一般的なペットボトルの水も賞味期限が1年~2年のものがほとんどです。1本(2リットル)が100円以内のものも多くありますので、それらを備蓄し、定期的に入れ替えるようにすればさほどコストもかかりません。
また、自分が普段飲んでいるティーバッグやドリップタイプのコーヒーなども余裕があれば備蓄しておくのがおすすめです。緊急時に普段飲んでいるものを口にするだけで、リラックスできますし、気分転換になります。
今回考えるのは7日間の備蓄ですから、栄養バランス云々と言っていられない期間ではありますが、パックの野菜ジュースや水で溶かして飲める顆粒の青汁のようなものがあっても良いですね。
女性ひとり分の「食料品」の目安備蓄量と選び方のコツは?
次に、女性ひとり分の目安となる備蓄の量と考え方をご紹介します。
7日分の食料というと、莫大な量をイメージするかもしれませんが、1日3食の7日分ですから、合計21食分必要だということを念頭においてください。
①食料は主食を軸に用意
何を備えたらいいか迷ったとき、まず揃えてほしいのが主食となるものです。例えばパックご飯5個入りを2セット、500g入りのパスタを2袋、これで20食分となります。そこにカップ麺などを追加して21食分とすればよいのです。
次に主食に合わせて必要なものを揃えていきます。例えばレトルトカレーやレトルト親子丼、パスタソースなど。さらに、ご飯のおかずになりそうなたんぱく質の多い缶詰を揃えておくのもおすすめです。
汁物もあるといいかもしれませんね。顆粒のわかめスープやコーンスープなども21食分用意してはいかがでしょうか。
乾パンなど長期保存できる食料を選ばなければならないとなると21食分というのが想像しづらいかもしれませんが、身近で売っているもので考えていけば案外簡単に揃えられます。
②備蓄食料を選ぶポイントは「賞味期限」と「食べるときの簡易さ」
備蓄食料を選ぶときに注意したいのが“賞味期限”です。ここ数年で技術が向上して、パックごはんなどは賞味期限が半年や1年のものが多くあります。レトルト食品に関しても同様です。乾麺のパスタの場合は、2~3年が一般的です。
詳しくは後述しますが、特別賞味期限が長いものを選ばなくても半年か1年で備蓄を入れ替える習慣をつければ揃えるものは安くて済み、気付いたら賞味期限が過ぎていたということも防げます。
もうひとつのポイントは“食べるときの簡易さ”です。パスタなどの乾麺であればゆで時間が短いものを選ぶと調理時に使うガスの量が少なくて済みます。またアルファ米は水でも食べることができますので、このようなものを備蓄しておくのもおすすめです。ちなみにカップラーメンは、時間はかかりますが、水でも食べられます。
③ゼリー飲料があると体調を崩したときでも食べやすく安心
災害時に体調を崩しているというケースも考慮しておきましょう。高熱で食べ物が喉を通らなくなった場合を想定して、ゼリータイプの栄養補助食品を用意しておくと安心です。
ローリングストックが続かない人におすすめ! 備蓄食料品の「1年ストック法」とは?
食料備蓄というと「ローリングストック法」がおなじみですね。日常的に食べているものを多く買っておき、1個食べたら1個買って補充することで一定量の備蓄を保ちながら「賞味期限切れ」も防げる備蓄法です。
しかし、「ローリングストックをやめた」という声をよく聞きます。実は筆者もローリングストック法は難しいと思い、講演などではおすすめしないようにしています。なぜなら、ローリングストック用の食料を常に覚えておかなければならないことや、キッチンや収納スペースに21食分もの量を収納するのが難しいご家庭が多いからです。
そこで筆者がおすすめしたいのが「1年ストック法」です。「1年ストック法」は、先にご紹介したような21食分の食料品を用意して、1年に1回入れ替えるという備蓄法です。1年であれば賞味期限内で幅広い選択肢がありますし、乾パンなどと違って普段の食事にも使えますので、購入から1年後に食べてしまえば無駄になりません。
しばらく前までは「半年ストック法」を推奨していましたが、ここ数年で一般的に買える食料品で賞味期限が1年あるものがかなり増えましたので、期間を倍にし、1年ストック法をおすすめするようにしています。
ストックを入れ替えるおすすめの時期は?
ご自身で入れ替えやすいタイミングで良いと思いますが、筆者は1年に1回、3月に備蓄食料を入れ替えるようにしています。3月はメディアでも防災に関して触れられることが多く、思い出しやすいからです。
備蓄品の保管はどうする? カセットコンロも必要? 飲食料備蓄の気になるあれこれ
水や食料備蓄に関するよくある質問にお答えします。
Q:備蓄の食料や水はどこに保管するのがいいですか?
A:存在自体を忘れないように、日頃から目に付きやすい場所に置いておくようにしましょう。筆者の場合、家族分の備蓄品を少し大きめのボックスに入れ、日頃使うには位置が高すぎて使えないけれど、視界には入ってくる場所に置いています。
ひとり暮らしの女性の備蓄であれば、小さなコンテナボックスなどに入れてクローゼットの下に置いておいてもいいでしょう。収納が少ないお家なら、椅子代わりにもなるコンテナボックスを普段生活している空間に置いておくのも良いのではないでしょうか。
Q:カセットコンロは用意した方が良いですか?
A:備蓄と合わせて、カセットコンロも用意しておきましょう。お湯を沸かしたり食事を作ったりするだけでなく、長期の停電やガスが止まった場合でも、カセットコンロがあると便利です。
また、カセットコンロとセットでカセットボンベも用意が必要です。カセットコンロのメーカーである岩谷産業が試算した結果によると、大人2人で気温10度の環境では7日間で9本、気温25度の環境では6.3本のカセットボンベが必要*となるそうです。ここでご注意いただきたいのが、ひとり暮らしだからと言って、カセットボンベの数を半分にしないことです。レトルトカレーを温めるなどの用途では、ひとり分もふたり分もほぼ同量の水とガスを使いますので、2人分に近い本数のカセットボンベを用意しておくのが良いでしょう。
*出典:ご存じですか?カセットボンベの備蓄目安
また、気をつけなければならないのは、カセットコンロとカセットボンベには使用期限があるということです。メーカーによって多少の差はあると思いますが、岩谷産業ではカセットコンロの使用期限は製造から10年、カセットボンベの使用期限は製造から7年となっています。
備蓄を日常化するには、普段使っている飲食料を使うのがポイント
災害のときはそれでなくても精神的負担が大きなものです。そのような状況下で、自宅で食事をすることができることが、どれだけ安心できることか。
「いつ来るか分からないから備蓄も本気になれない」と言う人もいます。しかし、いつ来るか分からない災害だからこそ、いつ来ても大丈夫なように備えておきたいものです。災害が来なければ「来なくてよかった」と思いながら、備蓄しておいた食料や水をいただけば良いのです。
用意を迷っていた方も、ぜひ今日から備蓄をはじめてみませんか?
※この情報は2024年5月31日時点のものです。
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