女性防災士の「防災ポーチ」の中身は? ポーチの選び方や最低限必要なものを解説します

いざというときに備えて用意しておきたい「防災ポーチ」。女性防災士はどんなものを準備しているのでしょうか? 家事アドバイザーで防災士の矢野きくのさんが、普段持ち歩いている防災ポーチの中身や、通勤や外出時に携帯しておくべき防災ポーチ用のアイテムの選び方のコツなどを教えてくれました。

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地震大国日本で、日々備えておくことの大事さ

家事アドバイザーで防災士の矢野きくのです。私は防災士として、日々の暮らしの中で「普通に備える」ということを提唱しています。

私は元々、危機管理について考えたり備えたりすることに積極的なタイプでしたが、よりしっかりと備えるようになった大きな転機は、2011年に起こった東日本大震災でした。応援のため被災した地域に通うようになり、その活動の中で「避難所でも数日はおにぎり1個だった」、「とにかく津波から逃げることに必死で何も持ち出せなかった」、「もっと日頃から備えておけばよかった」といった、リアルなお話を直接耳にして日々の暮らしの中で備えておくことの大切さを痛感しました。災害の発生を事前に予測することはできませんが、備えておくことで災害が発生した後の生活を少しでも暮らしやすい状態にすることは可能です。

働く女性におすすめしたい「防災ポーチ」

防災士の私が、働く女性におすすめしたいのが「防災ポーチ」の携帯です。

まだ馴染みがあまりないものなので、「防災ポーチって必要?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

「防災ポーチ」とはそもそも0次防災のための防災グッズです。0次防災とは職場や外出先など家以外の場所で災害にあったときのために最低限の防災グッズを携帯することを言います。この考え方は、2011年の東日本大震災後に広く言われるようになりました。

ちなみに、1次防災は家から外に持ち出す「非常用持ち出し袋」などの備えのことで、2次防災は家での備蓄のことを指します。

防災ポーチを持っていると、大きな地震や自然災害だけでなく、通勤や営業先までの電車移動で、例えば強風や停電で何時間も電車の中に閉じ込められたときなどにも役立ちます。

仕事用のバッグに防災グッズを入れて携帯することも、「0次防災」です
仕事用のバッグに防災グッズを入れて携帯することも、「0次防災」です

自分に合った「防災ポーチ」の中身の選び方とは?

防災ポーチの中に入れるべきものは、実は人によって大きく変わります。

なぜなら、日々の通勤が自転車や自家用車で5~10分の人と、電車で1時間以上移動する人とでは、必要となるアイテムが変わってくるからです。また、頻繁に遠方へ外出する人とそうでない人でも違いがあるでしょう。

自分の防災ポーチに何を入れるべきかを考えるとき、こんなシーンを想像してください。

今、大きな災害にあいました。その場所で目の前のテーブルの上にはいろいろな防災グッズが並んでいます。

「5個まで持っていって良いですよ」と言われたら、あなたは何を取りますか?「10個まで持っていって良いですよ」と言われたら?

あなたはまずは最初に命に係るものを5個選ぶのではないでしょうか。ここで選ぶものこそがあなたにとって1軍のアイテムです。このように考えていくことで、本当に自分にとって何が必要となるのかが見えてきます。

この記事の後半では防災ポーチに入れておくといいアイテムのチェックリストをご紹介しますので、ぜひその中から自分にとって必要と感じるものを選んでみてください。もちろん、リストにないものでも構いません。

女性防災士が普段携帯している3つの防災アイテム

防災ポーチの中身をご紹介する前に、筆者が普段から携帯しているいざというときにも役に立つ3つのアイテムをご紹介します。こちらも、防災ポーチと一緒にカバンに入れておくと安心です。

3つの防災アイテム

①水筒
水分は生きていく上で不可欠です。外出先で残りが少なくなってきたら、すぐに買い足して入れています。

②モバイルバッテリー(2個)
連絡手段などに欠かせないスマートフォンの充電に使用します。大容量のものでなく、万が一壊れてしまったときのことを考えて中容量のものを2個携帯しています。

③超撥水加工の風呂敷
普段はエコバッグ代わりにしていますが、災害時には風呂敷がさまざまな役割を果たしてくれます。例えば怪我をしたときの包帯や三角巾代わり、寒いときに羽織物代わり、避難途中で支給された物資を入れるなど。超撥水加工の風呂敷は水を運ぶこともできるので便利です。防災ポーチに入れておくのであれば大きなハンカチでもOKです。

女性防災士の「防災ポーチ」の中身を全部見せ! アイテム選びのポイントは?

ここからは私が実際持ち歩いている「防災ポーチ」の中身を、選び方のポイントとともにご紹介していきます。

ちなみに筆者の場合、仕事場は毎日決まった場所ではなく、仕事の内容などでその都度違っているので、土地勘のないところに行くことも多々あります。そのため、通勤という形で同じ場所に通っている方とは少し違ってくるかもしれません。

筆者が実際に持ち歩いている防災ポーチと中身
筆者が実際に持ち歩いている防災ポーチと中身


・食べ物
羊羹やシリアルバーなど日持ちしてエネルギーになりやすいものを持ち歩いています。

無印良品の「備蓄おやつ チョコようかん」
無印良品の「備蓄おやつ チョコようかん」は保存期間が約5年あります


・ソーラータイプのモバイルバッテリー
充電タイプのモバイルバッテリーを使い切ってしまった場合に備え、太陽光で蓄電できるソーラータイプをポーチに入れています。

手のひらに収まるくらいのコンパクトなサイズのソーラータイプモバイルバッテリー
手のひらに収まるくらいのコンパクトなサイズのソーラータイプモバイルバッテリー


・ヘッドライト
停電すると夜は本当に真っ暗になります。暗闇の中移動しなければいけないときは手に持つ懐中電灯タイプよりも、かさばりますが手が自由になるヘッドライトタイプを入れています。

ヘッドライトは100円ショップでも購入できます
ヘッドライトは100円ショップでも購入できます


・現金(紙幣、硬貨)
停電するとキャッシュレス決済は使用できません。また通信障害などで使えなくなる場合もあるかもしれませんので、現金を持ち歩くようにしています。災害時、スマートフォンは繋がりにくく、公衆電話のほうが繋がりやすくなると言われているので、10円硬貨もある程度用意しておきたいものです。

チャック付き保存袋に入れておけば、雨や泥で汚れても安心です
チャック付き保存袋に入れておけば、雨や泥で汚れても安心です


・レスキュー笛
レスキュー笛は防災ポーチのほか、日頃持ち歩いている鍵にも付けています。倒壊した建物の下敷きになってしまった場合など、大きな声で助けを求める体力には限界があります。少ない力で音を発することができるレスキュー笛があると役立ちます。

命を守るための重要なアイテムです
命を守るための重要なアイテムです


・トイレ用品(携帯トイレ、黒い大きなゴミ袋)
携帯トイレは3回分を持ち歩いています。また携帯トイレと一緒に持っておきたいのが黒い大きなゴミ袋です。90リットルタイプのものを1枚入れてあります。もしも屋外で用を足す必要が出たとき、このゴミ袋の底を頭が出る分を切って、ポンチョのように被ることで見せたくないところを隠すことができます。携帯トイレ自体必要なものですが、単体で持ち歩くと使いづらい場面があるのです。

トイレ用品(携帯トイレ、黒い大きなゴミ袋)


・寒さから身を守るためのもの(防寒シート、レインコート)
人間は寒い環境にいると体力を極端に奪われてしまいます。そのためアルミタイプの防寒シートを1枚用意しています。アルミシートには、断熱・保温・防寒・暴風・防水と災害時に役に立つ機能がたくさん備わっています。レインコートも同様です。雨に濡れれば寒さで体力も奪われるし、体調を崩しやすくなります。

寒さから身を守るためのもの(防寒シート、レインコート)
コンパクトなタイプのものが100円ショップでも売られています


・薬、衛生用品(日々服用している薬、絆創膏、生理用品、マスク、アルコールウェットティッシュ、ノンアルコールウェットティッシュ)
災害にあったその日に自宅に戻れるとは限りません。とくに東京都では、大規模災害のときには一斉に帰宅するのを待つことを推奨しています(「STAY for SAFETY 『帰らない』選択が、あなたを守る」 動画)。多くの人が道に溢れると緊急車両が通れなくなったり、群衆なだれがおこったりして二次被害も考えられるからです。

そのため2~3日分程度の自分の薬や衛生用品も持ち歩いておいたほうが良いでしょう。マツモトキヨシの「手で切れるハイドロコロイドパッド」は、怪我をしてしまったときのために絆創膏代わりに持ち歩いています。

ウェットティッシュは除菌用にアルコールタイプのものと、体や顔を拭く用の刺激がないノンアルコールタイプのものを入れています。

日々服用している薬、絆創膏、生理用品、マスク、アルコールウェットティッシュ、ノンアルコールウェットティッシュ


・ポケットラジオ
大きな地震が起きるとスマートフォンの通信が使えなくなる場合があり、そのようなときに頼もしいのがラジオです。ラジオのほうがスマートフォンの通信よりも災害の影響を受けづらいと言われています。

ラジオ
乾電池は入れずに別にして持ち歩いています


・地図、方位磁石
前述のとおり筆者は毎回土地勘のない場所へ仕事で出向くので、地図と方位磁石を持ち歩いています。スマートフォンのナビアプリが使えれば一番便利なのですが、通信障害で使えない場合や、電池を残しておきたいなどを考えるとどうしてもアナログの地図と方位磁石が必要になります。

地図、方位磁石
地図はサイズが大きくポーチに入らないので、別に持ち歩いています


・そのほか(連絡先一覧、最新の家族の写真、油性ペンとメモ)
家族など災害時に連絡を取りたい人の電話番号は、アナログの紙で持っておくことも必要です。また、家族の写真を防災ポーチに入れておくといいのは、家族と離れ離れになってしまったとき避難所などで他の人に聞くとき「この人、見ませんでしたか?」と写真を見せると分かりやすいという理由からです。これは、東日本大震災以降に推奨されるようになりました。筆者も当初は写真を持ち歩いていましたが、今はコンビニで写真シールを作れるところが増えたため、シールタイプに印刷したものを数枚持ち歩いています。また移動している途中で、何かをメモしたくなることが出てくるかもしれませんので、油性のペンとメモも入れています。

連絡先一覧、最新の家族の写真、油性ペンとメモ
家族の安否確認のための大切な写真は、防水のためにビニール袋に入れて携帯しています


以上が防災士の筆者が防災ポーチに入れているアイテムです。数が多いように見えますが、約 横20cm、高さ15cm、マチ4cmのポーチにコンパクトにまとまるので、普段持ち歩くかばんの中に納まります。

防災ポーチ

防災ポーチは何を使えばいい? 詰め方のコツは? 防災ポーチの気になるあれこれ

防災ポーチに関するよくある疑問にお答えします。
Q:ポーチ型防災セットの購入はありでしょうか?
A:ここまでご紹介したように、自分にとって何が必要なのかをリストアップし、それが揃っているような防災セットであれば購入しても良いと思います。もしくは市販のセットに自分で追加するのも良いでしょう。

Q:防災ポーチはどんな素材のものがいいですか? 防災ボトルに入れてもいいですか?
A:100円ショップなどでも売られているウォーターボトルに防災アイテムを詰める防災ボトルが注目されています。ウォーターボトルなので中を濡らさずに済みますし、コンパクトにまとめられるという点では良いですが、中身を取り出すのが少々大変です。実際、SNSでも「防災ボトルにこれだけ詰められた」という投稿も見られますが、災害時に瞬時に中身を取り出せないような状況です。

そのため私は完全防水ではありませんが100円ショップでも買えるようなビニールポーチをおすすめしています。中に何が入っているか、いつでも分かるようにしておくことも必要で、そのためにも透明のビニールポーチが良いのではないでしょうか。何が入っているか頻繁に目にすることで非常時でもすぐに「あれが防災ポーチにある!」と思い出すことができるからです。ジップロックのようなチャック付きの食品保存袋も良いと思います。

Q:防災ポーチを見直すのにおすすめのタイミングはいつ頃ですか?
A:1次防災の防災リュックや2次防災の家の備蓄も含め、防災ポーチも年に1回見直すことをおすすめします。筆者は毎年3月に全ての防災アイテムの見直しをしています。東日本大震災が起こった月でメディアでも毎年防災関連の情報が取り上げられることが多く、忘れないからです。

防災ポーチの中身チェックリストはこちら!

最後に、防災ポーチに入れておくといいアイテムのリストをご用意しました。筆者の中身と一緒でなくて構いませんので、自分に必要なものをチェックし防災ポーチを準備してみてください。

前途の通り、防災ポーチの中身で大切なのは自分にとっての優先順位です。筆者自身もこのリストにあって、防災ポーチに入れていないものもありますので、全部入れようとしなくてもOKです。

【食料品類】

  • 水分
  • 食べ物(羊羹やシリアルバー)
  • ゼリードリンク

【衛生用品】

  • 日々服用している薬
  • コンタクト
  • 絆創膏
  • 生理用品
  • マスク
  • ウェットティッシュ(除菌)
  • ウェットティッシュ(ノンアルコール)
  • クレンジングシート
  • 基礎化粧品
  • 歯磨きシート
  • 携帯トイレ
  • トイレをするとき隠す用の大きな袋

【避難に役立つもの】

  • 現金
  • モバイルバッテリー
  • ライト(ヘッドライトが望ましい)
  • 軍手
  • 地図
  • 方位磁石
  • レスキュー笛
  • ポケットラジオ
  • 連絡先一覧
  • 最新の家族の写真(シールタイプも良い)
  • 油性ペンとメモ
  • 身分証明書コピー
  • 通勤路にある避難所リスト

【その他】

  • 冷却シート
  • 使い捨てカイロ
  • 防寒シート
  • レインコート
  • 大判のハンカチ

「防災ポーチ」の中身は自分の行動パターンに合わせてカスタマイズを!

今回は0次防災である「防災ポーチ」についてご紹介しました。営業で外回りが多い方、デスクワークの方、電車通勤の方、車通勤の方…。行動パターンが違えば持ち運べる荷物の大きさや重さも変わります。それぞれに必要なアイテムは一人一人違いますので、自分自身の行動パターンに合わせて「防災ポーチ」を作ってみてくださいね。

※この情報は2024年4月26日時点のものです。

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