鉄瓶の選び方とおすすめ商品を専門店が伝授! 失敗しない鉄瓶初めてガイド
本物の鉄瓶は一生モノ。だからこそ失敗したくない! そこで鉄瓶選びのポイントを、南部鉄器専門店「東京 南部鉄瓶」の中町さんに教えていただきました。初心者におすすめの商品からお手入れ方法まで、この記事を読めばすぐに鉄瓶生活が始められます。
この方にお聞きしました
中町梨紗 さん
「東京 南部鉄瓶」のオーナー。「東京 南部鉄瓶」は20年以上にわたって、手作り・本物の南部鉄瓶・鉄器を販売している南部鉄器の専門店。女性が持ちやすい小ぶりなサイズの鉄瓶をはじめカラフルな急須、風鈴など質感の美しい南部鉄器製品がそろっている。
HP:https://www.nanbu-tetsubin.com/tenpo.htm
初めての鉄瓶、どんなものを選べばいい?
鉄瓶というと、岩手県の盛岡市やと奥州水沢でつくられる南部鉄瓶が有名です。カルキが強い日本の水道水でも、鉄瓶で沸かすとカルキ臭が抜けてまろやかでおいしくなり、女性に不足しがちな鉄分も摂れる。 しかも、南部鉄瓶から溶出した鉄分はその78%~98%が人体に吸収されやすい2価鉄であることがわかっています*。
「鉄瓶を使ってみたい!」と思うものの、いざ買うとなるとどんなものを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのでは? そこで今回は、南部鉄瓶専門店「東京 南部鉄瓶」の中町さんに、鉄瓶を購入する時に知っておくべきポイントを教えていただきました。
* 調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化, 今野暁子, 及川桂子, 日本調理科学会誌/36巻 (2003)1号
鉄瓶の選び方①|ホーロー加工されていないものを選ぶ
中町 鉄分摂取のために鉄瓶を購入される場合は、鉄瓶の内部がホーロー加工されていないものを選んでください。ホーロー加工にはサビにくく取り扱いが簡単というメリットがありますが、鉄分は溶出されません。
また、鉄瓶と間違われやすいものとして「鉄急須」があります。鉄急須は内部がホーロー加工されている上、お茶を淹れるための道具なので、お湯を沸かすことはできません。見た目が似ているので、鉄瓶購入の際は間違えないよう注意しましょう。
鉄瓶の選び方②|価格を抑えたいなら「機械づくり」
中町 鉄瓶には「手づくり」と「機械づくり(量産型)」のものがあり、それによって価格が変わってきます。
手づくりの場合は、昔ながらの技法でデザイン、鋳型の制作、模様押しなど、60以上の工程を職人さんが1個1個手作業で行っていくため量産ができず、価格が高くなる傾向にあります。
一方、機械づくりの場合は、砂を押し固めて型を作ってその中に鉄を流し込むという技法でつくられ、作業工程が少なく量産が可能なため手づくり鉄瓶に比べると価格が安くなります。
どちらも鉄製であることに変わりはありませんので、「機械づくり」であってもしっかりと鉄分は溶出されます。価格を抑えたい場合は、「機械づくり」のものを選んでいただくとよいでしょう。
また、「手づくり」「機械づくり」ともに使用方法を守っていただければ長くお使いいただけますし、修理も可能です*。
*状況によっては修理ができない場合もあります。
鉄瓶の選び方③|自宅の熱源に合ったものを選ぶ
中町 鉄瓶の熱源はガスとIHですが、IHでは使えない鉄瓶もあります。IHでご使用になりたい場合は、IHでの使用が可能な鉄瓶をお選びください。
鉄瓶の選び方④|低容量で軽めのものを選ぶ
中町 鉄瓶は、容量が大きくなるとその分重くなります。この先数十年後もお使いになることを考えたとき、年齢を重ねると片手で持てる重さが変わってくると思いますので、なるべく軽量な鉄瓶を選んでおくと安心です。1~2人暮らしの場合であれば、1Lサイズくらいのものだと使いやすいと思います。
ちなみに、鉄瓶で沸かしたお湯を入れたままにするのは、サビの原因となるため禁物。お湯は使いきれる分だけこまめに沸かすのが、長持ちさせるポイントです(もし余った場合は、ティーポットなどに移します)。お湯を余らせないという意味でも、低容量のものはおすすめです。
鉄瓶の選び方⑤|好きな模様を選ぶ
中町 鉄瓶にはさまざまな模様があるので、お好きなものを探してみるのも楽しいと思います。南部鉄器の代名詞でもある「アラレ」模様のほか、動物や植物などの模様もありますよ。
鉄瓶の代表的な模様
模様の由来は諸説ありますが、「霰(あられ)」が降る景色を表現したものと言われています。手づくり鉄瓶のアラレ模様は、形、深さ、間隔などが職人によって違います。
●動物模様
馬、龍、鶴亀、兎、カエルなどがあります。
●植物模様
植物の中で多く描かれているのが、桜、菊、椿などの花模様です。
●刷毛目模様
刷毛で刷いた刷毛跡を再現しています。
鉄瓶の選び方⑥|信頼できるメーカーの鉄瓶を選ぶ
中町 最近ではオンラインをはじめ、さまざまなところで鉄瓶を買い求めることができます。ここでは、南部鉄瓶ファンからの支持が厚く、初心者でも購入しやすい4万円以下の商品を取りそろえているメーカーをご紹介します。
中町さんおすすめ! 南部鉄瓶メーカー
・岩鋳(いわちゅう)
1902年の創業以来、400年を越える南部鉄器の伝統を守り続ける老舗。年間100万点にもおよぶ南部鉄器を、国内外向けに生み出しています。
https://iwachu.co.jp/
・及源‐OIGEN-(おいげん)
1852年創業。900年の歴史がある水沢南部鉄器の伝統を受け継ぎつつ、ニューヨーク近代美術館「MoMA」で紹介されるなど海外でも注目のメーカーです。
https://oigen.jp/
・及富(おいとみ)
1848年創業。卓越した技術を持った鋳物工房として茶の湯釜や鉄瓶の製造を手がけ、デザイン、製造、加工仕上げ、カラーリングまで一貫生産。すべてを自社工場で生産しています。
https://oitomi.jp/
・壱鋳堂(いっちゅうどう)
2009年に誕生。伝統を守りつつ新しいことに挑戦を続けるブランド。機能性はもちろんのこと、使わないときも存在感を発揮するインテリアやオブジェになるようなデザインが特徴です。おしゃれな鉄瓶が欲しい人におすすめ。
http://itchu-do.co.jp/
・虎山工房(こざんこうぼう)
1955年創業。昔から伝わる伝統的な形の鉄瓶のほか、和洋問わず様々なシーンで使えるモダンな鉄瓶や、工房の職人が開発した独創的な形の手作り鉄瓶などがあります。表面の肌「鋳肌(いはだ)」は手作りならではの美しさで、鉄瓶ファンから絶大な人気を誇るメーカーです。
https://www.nanbukozan.co.jp/index.htm
※上記メーカーの製品については、メーカーの直営店またはオフィシャルのオンラインショップ、取り扱い正規代理店での購入をおすすめします。
初心者さんにおすすめの鉄瓶5選!
日常使いしやすく小ぶりなタイプの中から、初心者さんにおすすめの鉄瓶を中町さんに選んでいただきました!
おすすめ鉄瓶①|但馬型アラレ|虎山工房/手作り鉄瓶
おすすめ鉄瓶②|7型アラレIH対応|岩鋳/機械づくり鉄瓶
(写真左)但馬型アラレ
但馬形という縦長の鉄瓶。注ぎ口が広く、水が入れやすくなっています。手づくり鉄瓶のアラレ模様は昔ながらの雰囲気があります。
●DATA
容量1.0L
熱量 ガス・直火使用
重量 約1.6㎏
価格 31,900円(税込み)
(写真右)7型アラレIH対応
代表的なアラレ模様で取っ手が倒れる鉄瓶です。少量の湯沸しに便利なサイズです。
●DATA
容量1.1L
熱量 ガス・直火使用、IH使用
重量 約1.8㎏
価格 16,500円(税込み)
おすすめ鉄瓶③|唐菊(和秋 作) |工房和秋/手づくり鉄瓶
伝統工芸士・金野和秋氏の手づくり鉄瓶です。1点1点、伝統技法(焼型法)により仕上げられています。
●DATA
容量1.2L
熱量 ガス・直火使用
重量 約1.5㎏
価格 29,700円(税込み)
おすすめ鉄瓶④|刷毛目|壱鋳堂/機械づくり鉄瓶
蓋の周囲が立ち上がっていて、現代のインテリアにもマッチするモダンな形の鉄瓶。天然漆焼付け仕上げで、高級感のある仕上がりになっています。
●DATA
容量0.6L
熱量 ガス・直火使用
重量 約1.2㎏
価格 11,000円(税込み)
おすすめ鉄瓶⑤|ケトルバウム|岩鋳/機械づくり鉄瓶
現代のインテリアになじむ、シンプルでモダンな鉄瓶です。
●DATA
容量1.1L
熱量 ガス・直火使用、IH使用
重量 約1.9㎏
価格 24,200円(税込み)
鉄瓶のお手入れ方法は?
鉄瓶を長く使うには、使い始めや使い終わりのお手入れが大切。ここでは、中町さんに教えていただいた正しいお手入れの方法をご紹介します。
鉄瓶のお手入れ方法①|使い始め
中町 おいしい白湯を作るためには、鉄瓶の内側に「湯垢」をつける作業が必要です。湯垢をつけることによって鉄瓶がサビにくくなります。鉄瓶は使いながら育てていくもの。使っていくうちに湯垢の層が厚くなり、真っ白になっていきますが、はがしたりこすり落としたりせずにそのまま使います。
■湯垢のつけ方
① 硬度300mg程度の硬水を8分目まで入れる(硬水はエビアンがおすすめ)
※水は鉄瓶の容量の3倍程度の量を用意しておきます。
② 鉄瓶の蓋をせず、弱火で20分程度沸騰させる。
※ガス・IHどちらの場合も、必ず弱火で沸かすこと。火力が強いと鉄瓶の側面が焦げてしまいます。
③ お湯を全て捨てて、蓋をはずし余熱で鉄瓶を乾かす。
④ ①~③を1つの工程として、3回繰り返す。
⑤ 鉄瓶の内側にできる白い膜が「湯垢」です。
※地域によって水質が違い、湯垢がつきにくい場合もありますが、湯垢をつけてから使用されることをおすすめします。
鉄瓶のお手入れ方法②|使い終わり・保管方法
中町 鉄瓶を濡れたまま放置するのはサビの元。使い終わったら、必ず中身を空にしましょう。余ったお湯はティーポットなどに移して、鉄瓶を乾かしてください。
■鉄瓶の乾かし方
① 中身を空にしたら、蓋を外して乾かす。蓋を外して放置しておけば、余熱ですぐ乾く。
② 余熱で乾かない場合は、弱火で30秒程度空焚きをする。
③ 洗剤で洗ったり、こすり洗いをしたりするのはNG。汚れが気になる場合は、水で洗う。洗った後は②の方法で乾かす。自然乾燥はサビの原因となる。
■保管方法
油に弱いため、鉄瓶をコンロのそばに置かないようにする。
鉄瓶のお手入れ方法③|赤サビが出てきたら
中町 どんなに気を付けていても、鉄製ですから赤サビが出てしまうこともあります。赤サビには「お手入れの必要がない赤サビ」と「お手入れの必要な赤サビ」があります。サビが出たとしても、そこまで過敏になる必要はありません。お手入れは、ご自宅で簡単にできます。
■お手入れの必要がない赤サビ
湯を沸かした時に金属臭がしない。湯は透明。
■お手入れの必要がある赤サビ
お湯を沸かした時に金属臭がする。赤っぽいお湯ができる。
▶お手入れ方法
① 煎茶の茶殻を出汁パックに入れて、水と一緒に鉄瓶に入れる。
② 鉄瓶の蓋を外したまま20分程度沸騰させてから火を止め、そのまま半日ほど放置する。
③ ②の水を捨て、再び水を入れて湯を沸かした後、金属臭がなくなり湯が透明になっていたら問題なく使える。
④ ①~③を行っても、臭いなどが気になる場合は、①②を2~3回繰り返すと落ち着いてくる。
鉄瓶のある生活を始めましょう!
「鉄瓶で沸かしたお湯でコーヒーを飲むと、味が違います。本当にお湯がまろやかになって、おいしさがアップします(中町さん)」
おいしくて、美容にもいい鉄瓶生活。毎日使うものだから、愛着の生まれる一品を買って、道具を育てる楽しみを味わってみませんか?
※この記事の情報は2023年7月11日時点のものです。
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