プロに聞いた「靴擦れ」「水ぶくれ」にならない、靴選びと防止グッズ
靴擦れや水ぶくれの原因は靴のサイズが合っていないから?! デザインが気に入って買ったパンプスやサンダルをこれ以上、下駄箱のこやしにしないために…。足を痛めない靴選びのコツを西武池袋本店のシューフィッター奥田裕子さんに聞きました。
靴擦れの原因は「大きいサイズ」を選んでいるから!
――靴擦れは足のサイズに対して、靴のサイズが小さいことが原因ではないんですか?
奥田:いいえ、靴擦れは「大きいサイズ」の靴を選んでいることが原因のケースが多いんですよ。
――「大きいサイズ」を選んではいけない理由は何でしょうか?
奥田:人は歩くとき、かかとから着地して重心を移動させながらゆび先で地面を蹴ります。その時体重は移行しますので、サイズが大きかったりゆるみがありすぎる靴だと、靴の中で足が大きく前後に動きます。
その結果、
①歩くたびに靴と皮膚がこすれて、摩擦で皮膚が熱を持つ。
↓
②熱を持った皮膚をカラダが冷やそうとして、水ぶくれができる。
↓
③その状態を我慢して履き続ければ、水ぶくれが破れて傷つき痛くなる。
これは、ヒールのないフラットシューズやスニーカーでも同様です。ゆびの関節が曲がっている人がいますが、その場合もゆるめの靴を履いて踏ん張っていたことが原因の場合が多いんです。
靴擦れしない靴選びのポイント①「かかとが靴にフィットしている」
――自分の足に合う、ゆるみのない靴選びのポイントについて教えてください。
奥田:まずは、かかとが靴の踵部にしっかりフィットしているか、ゆるみがないかをチェックしてください。靴擦れする、足が疲れる、足のゆびにタコや魚の目ができる…などは、かかとがフィットしていないことが原因で起こります。最近は歩かない習慣のせいか、年代を問わず足が華奢になっていて、靴のかかとが抜けやすい人が多いんです。かかとをしっかりとホールドしていないと、靴がパカパカとぬけてしまいます。
奥田:かかとがフィットしていないと、歩くとき靴が脱げないようにゆびの付け根からつま先にぐっと力が入るため、長時間歩くと足が疲れます。ヒールのあるパンプスだと足が前滑りをしてしまい、ゆびの関節が曲がったままで踏ん張りながら歩くことになります。そのため関節や足の裏に硬い角質ができ、それが魚の目やタコになってしまうのです。パンプスでの靴のトラブルは、前滑りが原因の場合が多いんです。
――靴がかかとにフィットしているかをチェックする方法はありますか?
奥田:靴を履いて立った時に、かかとに小指が1本入るようならNGです。手の小指の幅は約5㎜程度なので、かかとと靴にその程度のすき間があったら、ハーフサイズ下の靴を履いてみましょう。「ピタっと足に吸いつく」ようにフィットしたサイズの靴を選ぶことをおすすめします。
【足のゆびに水ぶくれができる 編集スタッフの私物の靴】
【かかとがしっかりフィットしている靴】※パンプスは参考商品
靴擦れしない靴選びのポイント②「サイズで選ばない」
――これまで、横幅がゆったりしていた方が、マメや水ぶくれができないと思っていました。
奥田:昔の日本人は幅広甲高な人が多かったので、それほど足幅はないのに「自分は足幅が広い」と思い込んでいる方が多いんです。大きなサイズの靴を選んでしまい、履いているうちに不具合が出て「靴が合わない」と来店され、実は華奢な足だったというお客様が結構いらっしゃいます。
――ちょうどいいサイズだと思っていても、実は「大きい」という場合があるんですね? これまで足幅ばかり気にしていました。
奥田:足幅の圧迫感でサイズを選ばれる方が多いですよ。靴はきつすぎず、ゆるすぎず全体のフィット感が大切。全体がピタッと余分なすき間がなくしっかり合っている方がいいんです。ただしパンプスの場合はつま先に硬い芯が入っているので、その部分のゆとりは大切です。歩くときはゆび先が動きますから、ゆび先が硬い芯の下まで入っていると、芯に当たってつま先を痛めてしまいます。靴の中でゆびが重ならず、ゆびがまっすぐ伸びて入っている状態がベストなんです。
\ワンポイント アドバイス ~靴を買う最適な時間は?~/
奥田:立ちっぱなしで仕事をしている人やデスクワークの人は夕方に購入されると良いでしょう。同じ姿勢でずっと動きがないと老廃物や血液が循環しないので足がむくみます。ご自身の履いている靴が、なんとなくパンパンになってきたという時間が一番むくんでいる時間です。デスクワークの人は、夕方や仕事終わりに足が一番大きくなっている場合が多いですね。
靴擦れしない靴選びのポイント③つま先の形で、合う靴は変わります
――つま先の形で、合う靴が変わるそうですね?
奥田:つま先の形には大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれ合う靴が変わります。履く時間が長い場合は、つま先の形に合う靴を選んだ方が負担が少なくなります。
【エジプト型】
親ゆび(一番目のゆび)が一番長いタイプ。
●合う靴は「つま先が丸いデザイン」
親ゆびの長い人が「つま先が尖っているデザイン」の靴を履きつづけると、親ゆびが長いので常に親ゆびが小ゆび側に押された状態になります、外反母趾になりやすくなりますので、長時間の着用は注意しましょう。
【ギリシャ型】
二番目のゆびが一番長いタイプ。
●合う靴は「つま先が尖っているデザイン」
このタイプの人がバレエシューズのような「つま先が丸いデザイン」を履くと、とつま先に入っている硬い芯の部分が二番目のゆびにあたってしまうことがあります。靴の中心が長いデザインの方がゆびをすっきり伸ばせます。
【スクエア型】
5本のゆびがほとんど同じ長さのタイプ。
●合う靴は「つま先がスクエアのデザイン」
つま先が四角い「スクエアデザイン」は、5本のゆびが寄せられずに着用できるのできゅうくつではありません。このタイブの人が「つま先の尖っているデザイン」を長時間履き続けていると、つま先が圧迫された状態になるので足は疲れやすくなります。
\ワンポイント アドバイス ~素材を換えて試してみる~/
奥田:高級感があり華やかなシーンに最適なエナメルは、素材自体がしっかりしているのでなんとなく圧迫感を感じるという場合があります。そんな時は、スウェード素材を試してみてください。エナメルで多少サイズがきつく感じる場合でも、スウェードなら馴染みやすく高級感もあります。
エナメルは「伸びない」と思っている人が多いんですが、伸びないのではなく素材の性質上、馴染むのが遅いんです。「圧迫感を感じるから」と大きなサイズにしてしまうと、エナメルは素材が硬いですから、靴の中で足が動き擦れると靴擦れが起き、履くことが苦痛になってしまいます。
「きついから」といって、大きなサイズにするのは危険です。販売員と相談しながら、おしゃれで快適な靴選びをしてください。靴は、なじむまでチョイ履きを数回繰り返すのがおすすめです。例えば通勤は履きなれた靴で出かけ、会社に着いたら新しい靴に履き替えて靴を足になじませる。それを何回か繰り返すことで、自分に合った靴になっていきます。靴はTPO に合わせて履き替えるのがベスト。おしゃれでデザイン性の高い靴ほど長時間の着用はできるだけ避け、短い時間でおしゃれを楽しみましょう。
靴擦れしない靴選びのポイント④インソールで微調整をする
――買ったときには靴が合っていても、日によってサイズが合わなくなるということがあるんですが…。
奥田:寝不足、仕事、生理など体調の変化で足の状態が変わり、昨日1日履いて快適だったのに、今日は2時間程度で足に合わなくなってしまうということは必ずあります。そんな時は無理をせず、靴を履き替えるか市販のインソールなどで調整することをおすすめします。シリコン製のインソールはストッキングのすべり止めにもなって便利です。
――インソールでの調整方法を教えてください。
奥田:人は左右の足のサイズが違う場合がほとんどです。左右のサイズ合わせの微調整もインソールでできます。
▼前滑り防止、左右のサイズ調整に「前滑り防止用インソール」
右の靴にゆるみがある場合は、インソールを足ゆびの付け根の手前に置きます。ほとんどゆるみのない左の靴に入れてすべり止めとして使用する場合、土ふまず部あたりに置くとかかとがフィットし、抜けにくくなります。足がむくみきついと感じたら、インソールを後方にずらして調整してください。
▼土踏まずが合わない場合「縦アーチをサポートするインソール」
土踏まずが合わない人は、土踏まずが浮いていることでゆびの付け根がかかとだけで立っている状態になるため、ヒールが高くなれば高くなるほどゆびの付け根に負担がかかります。インソールを、土踏まずのが乗りそうな心地の良い場所に入れて調整しましょう。
――数種類のインソールを組み合わせて使った方が良いのでしょうか?
奥田:デザイン性の高い靴は色々詰め物を入れることを想定して作られていませんので、たくさんのインソールを一度に使用することはあまりおすすめできません。靴屋さんにはインソールのサンプルがあると思いますので、色々試してみて、最適な物を購入するといいと思います。
出かける時はインソールで調整して快適でも、きつく感じるようになったらインソールを抜いてくださいね。
――かかとがぬけてしまう場合、インソールで長さの調整はできますか?
奥田:前足部にインソールを入れると足は後ろに移動しますが、前に敷けば敷くほどつま先部分は狭くなり足に余計な負荷がかかります。かかと専用のインソールもありますが、個人差で合う人、合わない人がいます。靴が馴染んでくるとさらにゆとりができ靴が脱げてしまう場合がありますので、購入時にかかとが抜けてしまう靴はあまりおすすめできません。
――購入後、パンプスの履き口に足があたって気になる場合があります。
奥田:100円ショップなどで売っているツボ押しを使って厚みを薄くし、皮を柔らかくするだけで履きやすくなります。
足を靴にあわせるのではなく、靴を足に合わせましょう
――デザイン性の高い靴は、足にとって負担がかかる場合が多いですよね?
奥田:トレンドのデザイン、洋服にあった靴を選びたいという場合もあると思います。その場合は丸一日履くのではなく、履きたいシーンを決めて着用時間を調整して履くようにしていただくと良いと思います。
痛い時は無理をしないでください。不快なところをカバーしようとしてカラダの別のところに負担がかかる場合があります。体重の増減、骨の形状の変化などで、昨年は快適に履けた靴でも今年は痛いということもあります。つま先が細く、華奢なデザイン、ヒールが高ければ高いほど足には負担にかかります。昨日1日履き続けていて大丈夫でも今日大丈夫だとは限らないので、足の状況を考えながら履いてくださいね。
この方にお聞きしました
シューフィッター 奥田裕子さん
西武池袋本店 婦人雑貨部 婦人靴係 シューマイスター。バチュラー・オブ・シューフィッティング (上級シューフィッター)
※記事内で紹介している靴(参考商品以外)は、編集部スタッフの私物です。
※記事の情報は2020年8月4日時点のものです。
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