【抹茶の効能と点て方】気軽に、自由に楽しむおうち抹茶
海外では「日本のスーパーフード」と呼ばれるほど嬉しい効能がいろいろの抹茶。正式な茶道のお作法のもとで楽しむのも良いですが、もっと気軽に、ふだんの暮らしに抹茶を取り入れてみませんか? 今回は、日本茶の専門家に教わった抹茶の魅力や気軽な点て方、楽しみ方をご紹介します。
抹茶ケーキや抹茶アイスなど、和菓子だけでなく洋菓子のフレーバーとしても人気の「抹茶」。
でも、抹茶スイーツには親しんでいても、日常的に“お抹茶”を飲んでいる、という方はそんなに多くないのではないでしょうか。
お抹茶を点てると聞くと、どうしてもお点前のイメージが先行して、難しそう!と構えてしまいがち。でも実は、少ない道具で意外と簡単に点てられるのです。
そんな抹茶の気軽な楽しみ方や、抹茶を摂るメリット、抹茶の製法、選び方について、東京・石神井公園にある老舗茶店「赤井茶店」の店主・赤井健吾さんに詳しく教えていただきました。
この方に教えていただきました!
赤井健吾さん(写真右)
創業100年(明治40年創業)を超える老舗茶店「赤井茶店」の4代目店主。日本茶インストラクターの資格ももち、お店では不定期で「日本茶のおいしい淹れ方講座」を開催。初代の「美味しいお茶を広く皆様にお飲みいただきたい」という志を今に受け継いでいる。写真中央はお母様の佳代子さん、左は奥様の麻由美さん。
赤井「ちょっと疲れたときや仕事の合間に、自分の気に入った抹茶をポットのお湯でササッと点てて飲む一服(一杯)は格別です。
おうちでは茶道のお作法は脇に置いて、気軽にお抹茶を味わってみてください」
そもそも抹茶はどうやってできる?
抹茶の点て方を教わる前に知っておきたいのは、そもそも抹茶はどうやって造られるのか?ということ。抹茶=普段よく飲んでいる煎茶を粉状にしたもの、なのでしょうか?
赤井「実は、抹茶と煎茶は、茶葉の栽培方法から違います。
一般的な煎茶の場合、お茶の葉は太陽の光が直接当たる『露地栽培』で育てられますが、抹茶の茶葉は葦簀(よしず)などで覆いをし、直射日光が当たらないようにした『覆下園(おおいしたえん)』と呼ばれる茶園で育てられます。
お茶の葉にはテアニンという旨味・甘味成分が含まれているんですが、太陽の光に当たると、そのテアニンが苦味・渋み成分であるカテキンに変化してしまいます。
抹茶を飲んだ時に煎茶にはない独特の旨味や甘味を感じるのは、あえて茶畑に覆いをすることで茶葉のテアニンがカテキンに変化するのを抑えているからなんです。この栽培方法は、日本茶の中でも高級茶として知られる玉露と一緒です。
煎茶と抹茶ではその後の製法も違います。煎茶は摘み取った茶葉を蒸した後、揉む工程が入りますが、抹茶の場合、茶葉は揉まずに平たいまま乾燥。ここから茎や葉脈を取り除いたお茶を『碾茶(てんちゃ)』と呼びます。抹茶は、この碾茶を石臼などで挽いて粉末にしたものなんです」
茶葉の栄養まるごと! 抹茶の効能
そんな手間ひまかけて造られる抹茶は、海外では「日本のスーパーフード」とも呼ばれ注目を集めていますが、どんな栄養が含まれているんでしょうか?
赤井「日本茶には、抗酸化作用のあるカテキン類やビタミン類、気分をすっきりとさせ集中力を高めてくれるカフェイン、リラックス効果のあるテアニンなど、働く現代人に嬉しい成分がいろいろ含まれています。
しかも抹茶の場合、その栄養がまるごと摂れるのがいいところ。食物繊維など煎茶では摂り込めない成分も吸収できます。
もともとお茶は中国から薬として伝えられたもので、鎌倉時代、臨済宗の栄西禅師が著した『喫茶養生記』の冒頭にも、『茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり』とあります。古くから日本人は、健康飲料としてもお茶を好んで飲んでいたようです」
■抹茶の健康成分と効能
・カテキン…抗酸化作用、血中コレステロール上昇抑制、血圧/血糖上昇抑制
・テアニン…リラックス効果
・カフェイン…眠気防止、疲労回復
・ビタミンA/βカロテン…抗酸化作用
・ビタミンC…抗酸化作用、風邪予防、美肌効果
・食物繊維…便秘防止
知っておきたい抹茶の選び方&保存方法
「抹茶」と一口に言っても、スーパーで売られている袋入りの安価なものから、デパ地下のお茶売り場で見かける1缶4,000円くらいするものまで様々。家でおいしいお抹茶を点てるには、どういうものを選べば良いのでしょうか?
赤井「商品に『抹茶』と書いていても、先ほどお話した碾茶を石臼で挽いたものもあれば、煎茶を粉砕した、本来なら抹茶と呼べない粉末茶や粉茶を『抹茶』として売り出している商品も出回っていて、見た目で違いを判断することは難しいです。
また碾茶を使ったものでも、昔ながらの石臼で丁寧に挽いたのと、機械で挽いたのでは風味や味わいが異なります。石臼は石の性質から最も放熱性に優れ、摩擦熱による茶葉の劣化を防ぐため、上級の抹茶は石臼で挽いて造られます。
ですので、おいしいお抹茶を点てるためには、ある程度のお値段のものを選んだ方が良いでしょう。とはいえ、本格的なお点前ではないので、何千円もする抹茶を選ぶ必要はありません。20g(小1缶)800~1000円くらいのものからお試しください」
1杯点てるのに使う抹茶は2g程度ということなので、20gで10杯分は点てられる計算です。
赤井「ただし抹茶は鮮度が命。時間が経てば経つほど色味、風味、香りが落ちてしまいますので、開封後は10日以内を目安に使い切ったほうが良いでしょう。
それから抹茶は、何より温度変化に弱い食品なので、買って来たらなるべく涼しく、室温が一定に保たれる場所で保管するようにしましょう」
お抹茶の基本の点て方、味わい方
さて、抹茶が手に入ったら早速キッチンやリビングで、自由な気持ちでお抹茶を点ててみましょう。
赤井「お抹茶を点てるのにどうしても必要な道具と言えば茶筅くらい。穂数が70~80本くらいの『数穂(かずほ)』や『八十本立』など安価なもので良いと思います。最近は扱いやすい樹脂製のものもあります。
茶碗は抹茶茶碗でなくても、底が広めで茶筅が入る大きさであればOK。スープカップやご飯茶碗などでも代用できます」
■準備するもの
①抹茶(20gで1000円前後のものがおすすめ)
②茶筅(数穂や八十本立など安価なものでOK)
③抹茶茶碗(茶筅が入る大きさであれば、なんでもOK)
④茶杓(小さじの計量スプーンやティースプーンでもOK)
⑤湯冷まし(軽量カップでもOK)
⑥湯(90℃くらい)
■お抹茶の点て方
[下準備]茶筅をお湯に浸けて、穂先を柔らかくしておく。
1)茶杓2杯分(1.5~2g、小さじ1杯)の抹茶を茶椀に入れる。抹茶にダマがある場合は、茶こしで漉す。
2)お湯60~70mlを湯冷ましに入れ、お湯の温度を70~80℃くらいにする。
3)湯冷ましのお湯を茶碗に注ぐ。
4)茶筅を親指、人差し指、中指で持ち、手首のスナップで茶筅を前後に素早く動かす。
\ Point! /
茶筅の穂先で底を軽く引っ掻くように前後に動かしながら抹茶とお湯をなじませ、その後、穂先をだんだん底から浮かせながら前後に動かします。もう片方の手は茶碗に添えましょう。
5)表面に細かくクリーミーな泡が立ったら完成!
■お抹茶をおいしく味わう
赤井「お抹茶は甘いものと一緒に頂くと、より美味しさが引き立ちます。写真のような季節の練り切りや和菓子も良いですし、クッキーやビスケットといった焼き菓子にも良く合いますよ」
他にもあるある! 抹茶の楽しみ方
もっと気軽に、茶筅がなくても抹茶を楽しみたい!という方に、赤井さんからこんなアイデアが。
赤井「例えば、いつも飲んでいる煎茶に抹茶を少し加えるだけで、味も香りもぐんと豊かになるのでおすすめです。
あと、ホットケーキの生地や生クリームに加えても良いですし、ドレッシングに加えても美味しいですよ。
また、最近では『抹茶ミニシェイカー』という茶筅がなくてもお抹茶や抹茶ラテが作れる便利グッズも出ていますので、そういうものを使えばより抹茶の楽しみ方が広がると思います」
* * * * *
お抹茶でしか味わえない香り、甘味、旨味。クリーミーな泡とともにごくりと飲めば、ふーっと肩の力が抜けていきます。仕事や家事の合間の気分転換に、ぜひ自分のためのお抹茶を点ててみてください。
■お店情報
「赤井茶店(あかいちゃてん)」
東京都練馬区石神井町7-2-7
TEL:03-3904-1381
営業時間:9:30~19:00
定休日:日曜・祝祭日
HP
<参考文献・サイト>
『ほっとひといき日本茶入門』(公益社団法人 日本茶業中央会)
東京都茶共同組合HP
宇治丸久小山園HP
※記事の情報は2020年10月13日時点のものです。
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