ツライぎっくり腰、早く治すための正しい対処法とは? 専門家が指南!

ある日、突然やってくるぎっくり腰。このツラさ、いつまで続く? 早く治すためにどうすれば? 再発を繰り返さないための予防法とは? ぎっくり腰にまつわる疑問や正しい対処法を、東京・四ッ谷「BLBはり灸整骨院」の院長、野口卓人さんに教えていただきました。

メインビジュアル:ツライぎっくり腰、早く治すための正しい対処法とは? 専門家が指南!

教えていただいたのはこの方

野口 卓人さん
BLBはり灸整骨院院長。女子プロゴルフ、大学サッカー、テーザーワールド(ヨットレース)などでトレーナー経験を積み、2018年3月に「BLBはり灸整骨院」を開業。鍼灸師、柔道整復師、NASM-PES(全米スポーツ医学会認定資格)

そもそもぎっくり腰とは? 何が原因?

――そもそも「ぎっくり腰」ってどういった症状なんですか?

野口 「ぎっくり腰」とは突然やってくる腰の痛みを総称したものです。正式な症状名は「急性腰痛」です。原因は人によってさまざまで、例えば転んで急に腰を痛めても「ぎっくり腰」だし、特に何もしていないのに朝起きた時に突然腰が痛くなれば、それも「ぎっくり腰」ということになります。

――原因は無数にあるんですね。

野口 はい。腰痛には先ほどお話しした急に痛みがやってくる「急性腰痛」と、長期に渡って痛みが続く「慢性腰痛」の2タイプあるんですが、人によっては慢性的な痛みからある日痛みがぐっと増して急性腰痛になる場合もあれば、その逆で急性腰痛から慢性腰痛に進行してしまうケースもあります。

――年齢とは関係なく、「ぎっくり腰」経験のある人とない人がいるように思うんですが、“ぎっくり腰になりやすい人”っているのでしょうか?

野口 そうですね。もちろん生まれつき腰が弱い方もいますが、そうではないのにぎっくり腰になりやすい人というのは筋肉の質や柔軟性が低下している方です。それには生活習慣がかなり大きく影響していて、若い方でも生活習慣が悪ければぎっくり腰を繰り返してしまうことがあります。

例えば、運動することは良いことですが無理をしすぎるとかえって筋肉への負担になるし、暴飲暴食で栄養状態が乱れれば筋肉の質も悪くなる。ですので、適度な運動、質の良い睡眠、バランスの良い食事を心がけることが大事なんです。

暴飲暴食イメージ


――「急性腰痛」というからには、予兆などはないんでしょうね?

野口 本来は予兆があるはずなんですが、予兆を感じ取れない人が多いんです。毎日ラジオ体操やストレッチなどをやっていれば、「昨日はなんともなかったのに、今日は腕を上げたときに左肩に違和感があるな」とか、「ここの筋肉が硬いな」といった微妙な変化に気づきやすい。ぎっくり腰を未然に防ぐには、そんな風に日々自分の体に意識を向けることも重要です。

ぎっくり腰のこのツラさ、いつまで続く?

――実際ぎっくり腰になってまず不安になるのは、「この痛みがいつまで続くんだろう?」ということだと思います。

野口 人にもよりますが、強い痛みが続くのはだいたい3~5日程度でしょうか。1週間くらいである程度痛みは治まって、何とか動けるようになる状態まで回復します。

その後、大きな動きをするとまだ痛みがあるかな、寝返りを打つと少し違和感あるなといった状態が数週間続いて、発症から1か月くらい経った頃には、日常生活ではもう痛みを感じなくなっている、というのが一般的な経過です。

ただし先ほども言ったように、間違った対処法で急性腰痛から慢性腰痛に移行することもあるので、正しく対応することが重要です。

回復イメージ

ぎっくり腰の対処法、やってよいこと、だめなこと

Q. 腰まわりは冷やすより、温めたほうが良い?


A. 「痛み(炎症)=治そうとする反応」。冷やして抑え込むより、温めて応援を
 

野口 そもそも痛みというのは、体を治そうとするときに出る炎症反応です。西洋医学ではとりあえず痛みを取り除くために、体を冷やしたり湿布や薬を使って炎症反応を抑えるというアプローチを取りますが、東洋医学の場合は積極的に体を温めて炎症反応を応援しましょう、という考え方をします。

温めて炎症反応を促進させることにより、少し痛みは強まるかもしれませんが、回復は早まります。動けないようなぎっくり腰でない限り、ゆっくりお風呂に入ることもおすすめです。

ただし安静にしていてもズキズキと脈打つような痛み(自発痛)があるときは、冷やしたり薬を飲むなどして痛みを取り除いたほうが良いでしょう。

 

Q.ぎっくり腰になったら、とりあえず安静にしたほうが良い?



A. 激痛期間は安静に。痛みが少し落ち着いたら動ける範囲で

 
野口 痛みの度合いによりますが、全く動けない、少しでも動くと痛いという状態であれば、痛みがストレスになって治す力を邪魔してしまいます。そんな時は自分にとって楽な姿勢で安静にしたほうが良いでしょう。

少し痛みが落ち着いてきてなんとか歩けるようになったら、動ける範囲で動いたりマッサージやストレッチを取り入れるなどして、筋肉を緩め、血流を良くしたほうが回復は早まります。ただし、もちろん激しい運動や無理な動きはNGです。


Q. コルセットを着けていたほう方が回復が早まる?



A. コルセットに甘えすぎると、筋肉の衰えにつながります

野口 たとえば動けないくらい激痛なのに仕事などで休めない、という時にはコルセットで腰まわりを補助することは有効ですが、そうでなければコルセットに頼らずに治していったほうが結果的には良い、というのが僕の考えです。

コルセットを着用するということは、腰骨やそれを支える筋肉の動きを固定するということ。でもそうすると今度は筋肉が「サボっていいんだ!」とだんだん衰えていき、慢性腰痛の発症につながることもあります。激痛時はコルセットを着用するにしろ、ある程度痛みが治まってきたら、コルセットを外して体を動かしたほうが良いと思います。

また、コルセットに頼りすぎると、本当は治っているのに「外すのが怖い」というような精神的な依存も出てきてしまう恐れがあるので注意が必要です。

 

Q. 寝るときの姿勢は仰向けが良い?


A. 自分にとってラクな姿勢で寝るのが一番です


野口 「ぎっくり腰」と一口に言っても痛む場所は人それぞれなので、自分にとってラクな姿勢で休むのが一番です。腰の右側が痛ければ右側を上にして寝たり、もちろん仰向けの方がラクなら仰向けでも。

横向きで寝る場合は、軽く膝を曲げてクッションのようなものを両膝で挟むとラクになることが多いので試してみてください。

ぎっくり腰を再発させないための5つの予防法

いつの間にか痛みも消え、すっかり日常に元通り…。でもぎっくり腰は、一度なると再発する怖さもあります。野口さんにぎっくり腰を繰り返さないためのストレッチ法や日々の心がけなどをうかがいました。

【1】ストレッチを取り入れる


▼前にかがむと腰が痛みがちな人におすすめ!

お尻のストレッチ

お尻のストレッチ1
①仰向けになり、両膝を立て、右外くるぶし部分を左太ももに引っ掛けます。
お尻のストレッチ2
②引っ掛けた脚と、立てた脚の太もも裏をくぐらせるようにして両手を組み、左脚を上半身のほうに引き寄せます。右側のお尻から太ももにかけての筋肉が痛気持ちいいくらい伸びていることを感じながら30秒キープ。反対側の脚も同様に。


▼腰を反らすと痛みがちな人におすすめ!

股関節のストレッチ

股関節のストレッチ1
①両膝立ちの状態から左脚を体の前に出し、右足の甲を床につけた状態でゆっくりと体の後ろへ右脚を伸ばしていきます。
股関節のストレッチ2
②さらに腰を床に近づけるように落としながら後ろへ右脚を伸ばしていき、その状態で30秒キープ。反対側の脚も同様に行いましょう。


▼デスクワーク中におすすめ!

座ったままお尻ストレッチ

座ったままお尻ストレッチ1
①椅子に座った状態で、左脚の膝上に右外くるぶしをのせます。手は足の上に。
座ったままお尻ストレッチ2
②猫背にならないように胸を張った状態で、上半身をゆっくり前に倒していきます。その状態で30秒キープ。反対側の脚も同様に行いましょう。
座ったままお尻ストレッチ3
③慣れてきたら、両手を膝の上に置き、つま先の方へ上半身を倒します。ひねりを加えることでより筋肉がストレッチされます。


座ったまま腰ひねりストレッチ

座ったまま腰ひねりストレッチ
①前を向いて座った状態で背筋を伸ばし、腰を左側にひねりながら両手でイスの背もたれを掴みます。その状態で30秒キープ。右側も同様にひねります。



【2】デスクでの姿勢に気を付ける

正しい姿勢イラスト

野口 イスの奥までしっかり深く座り、背もたれに腰をつけて、骨盤部分から肩、耳が一直線になっているのが理想の姿勢です。膝の角度は90~100度、足裏がしっかり地についている状態がベスト。イスの座面が高くつま先立ちのようになってしまう場合は、足をのせる台を置くなどして調整してください。

また、パソコンの位置が高すぎたり低すぎたりすると、姿勢が悪くなってしまいます。パソコンモニターの上辺が自分の目線くらいの高さになるのが理想です。

 

【3】お腹に力を入れることを意識する

お腹に力を入れる

野口 お腹をへこませるようにぐっと力を入れて、腹横筋というインナーマッスルを鍛えましょう。インナーマッスルはいわば筋肉のコルセットですので、そこを鍛えることは腰痛を予防するうえでとても有効です。

初めのうちは常にお腹に力を入れ続けるのが大変ですが、家から駅まで歩く間とか、電車に乗っている間とか、イスに座っている間とか少しずつ意識する時間を伸ばしていくと、そのうち無意識にお腹に力が入るようになります。
 

【4】大股で歩く

大股で歩く

野口 いつもより半歩、大股気味に歩きましょう。大股で歩くことで、例えば右脚を前に出した場合、左脚を後ろに蹴り出す力が意識されるようになります。

ふだん小股で歩いている人は、この後ろに蹴り出す力がうまく働かず、太ももの裏の筋肉量が落ちていることが多いのです。

後ろに蹴り出すことを意識しながら大股で歩くことで、自然と背筋が伸び、ヒップアップにもつながります。
 

【5】恐怖心や不安の記憶を断ち切る

ポジティブシンキング

野口 ぎっくり腰を経験すると、「痛い」「怖い」という恐怖心や不安を脳が記憶し、本当は痛みがないのにも関わらず「痛い」と認識してしまう場合があります。

痛みの記憶を断ち切るためにも、少しずつストレッチや運動量を増やして「この動きは大丈夫」と一つ一つ確認していきましょう。また、何か熱中できることを見つけたり、楽しいことを想像するなどして、「痛い」「怖い」といったネガティブな感情で腰に意識を集中しすぎないようにするという心がけも有効です。
 
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いかがでしたか?

特に冬場は腰まわりが冷えることで血行が悪くなり、ぎっくり腰を発症してしまう人が多いようです。今回ご紹介した予防法や対処法を参考に、痛みのない健やかな毎日をめざしましょう。
 


今回ぎっくり腰について詳しく教えていただいた「BLBはり灸整骨院」院長・野口卓人さん

BLBはり灸整骨院
東京都新宿区若葉1-1-15 YTビル1F
03-5925-8324
https://yotsuya-blb.com/

※記事の情報は2020年1月17日時点のものです。  

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