エシカルファッションでSDGsに貢献! 楽しく続けるための「7R」とは?

1枚の洋服を大切に着続けることで、地球や社会に良い変化を起こすアクションになる。日々の暮らしの中で、無理なくエシカルファッションを取り入れるアイディアを「一般社団法人エシカル協会」の堀田三佳さんに教えていただきました。

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この方にお聞きしました

堀田三佳 さん

一般社団法人エシカル協会 事務局次長/エシカル・コンシェルジュ。英国オーガニックコスメブランドで約10年、東日本統括責任者を経て、その後、日本全国にスープ事業などを手がけるベンチャー企業の教育部門にて人材育成事業に従事。そのかたわら、気候変動、国際認証、動物福祉など多岐にわたるテーマを学び、エシカル・コンシェルジュを取得。エシカル協会主催の講座企画運営に携わり、同協会事務局次長として現在に至る。エシカル消費の講演活動、雑誌メディア等、取材インタビュー対応や記事監修を通して多くの方へのエシカル普及啓発に務める。米国 アルゴア元副大統領による気候変動対策プロジェクト 「クライメート・リアリティ・プロジェクト」修了。クライメート・リアリティ・リーダーを取得。一般社団法人エシカル協会 ウェブサイト:https://ethicaljapan.org/

一般社団法人エシカル協会 事務局次長 堀田三佳さん

世界にあふれる「洋服ゴミ」という現実

南米チリには、着古した衣類が不法投棄され「衣類の墓場」となっている砂漠があります。私たちが処分した服が、国内で再資源化される割合はわずか5%。残りの95%は焼却または埋め立てられます。その量は年間約48万トン、1日で1,300トン(大型トラック約130台分) *もあるという事実をご存じでしょうか?

*環境省サイトより
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

--沿岸に投棄された服の山の写真を見て、衝撃を受けました。

堀田  資源ごみとして出した洋服が燃やされず不法投棄されていたり、リサイクルに出したと思っていた洋服が燃やされて二酸化炭素を排出する原因になっているというケースもあります。いらなくなった洋服を寄付という形で発展途上国に送る方法もありますが、発展途上国では洋服が受け入れられないくらい増えすぎて、洋服を埋めているという事実もあります。

こういった事実を前に私たちができることは、洋服を買う時に「本当に必要なのか」を考えること。それが、SDGsに貢献する第一歩になります。

「エシカル」とは、心の豊かさを計るものさし

--まずは、「エシカル」の意味から教えてください。

堀田 「エシカル」は英語に直訳すると「倫理的な」という意味ですが、「エシカル協会」では人や社会、地球環境、地域に配慮した行動のことと説明しています。戦後、豊かさの指標は「GDP(モノやサービスで得られる対価)」で数値化してきましたが、そういった数字による指標だけではなく、人、環境、社会、地域などに配慮した考え方や行動こそが豊かさの指標になってほしいという思いで活動を続けています。

--ここ数年で「エシカル」や「エシカル消費」という言葉が、急激に広まった気がするのですが…。

堀田 「エシカル」は2008年頃にイギリスから入ってきたといわれている言葉ですが、日本で「エシカル」という言葉が広まったのはここ最近のこと。2015年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の考え方が浸透するのにも時間がかかり、日本はしばらく「エシカル」への第一歩が踏み出せない状態でした。

2018年頃になって、政府や自治体主導で企業の意識改革をしていかなければならないという風潮が高まると同時に、気候変動や人権問題、貧困、格差といった問題に関心が向けられて、できるだけ負荷の少ないものを使おうという意識が広まり始め、地球環境や地域の活性化などに配慮した「エシカルな製品」が私たち消費者のもとに、少しずつ届くようになってきたのです。

●SDGsについて(外務省サイト)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

もう一つの大きなきっかけがコロナの流行です。2020年のコロナ第一波の時、外出自粛要請期間にスーパーやドラッグストアの陳列棚から商品がなくなりましたよね。あの時「原材料不足」などモノづくりの背景に思いを馳せなければならない状況に直面し、自分にとって何が本当に必要なものであるかを見直したり、家にある古い布でマスクを作ろうと思う人が出てきたり、着なくなった洋服をアレンジして小物にする人など、今あるもので工夫できないかと考える人がが増えましたね。これこそが「エシカルファッション」の第一歩なのです。

コロナが発生したことはとても悲しいことでしたが、エシカルな価値観をライフスタイルに自然と取り入れる良いきっかけになったと思っています。

巣ごもり需要で、マスクを手作りする人が増えミシンの販売台数が急増しました。
巣ごもり需要で、マスクを手作りする人が増えミシンの販売台数が急増しました。

「1枚の洋服を大切に着続ける」 それがSDGsの第一歩になる

--「エシカルファッション」を始めたいと思っても、続けるのが大変そうと思う人もいると思います。

堀田 確かに、いざ始めようと思っても何らかの壁にぶつかってしまうことは往々にしてあります。例えば、発展途上国で作られているフェアトレードのコットン製品は飛行機で輸送しますが、輸送の際には二酸化炭素が発生します。二酸化炭素は温暖化の一番の要因とされていますので、「この洋服を買うことは温暖化の原因になってしまうのでは?」という事実とのぶつかり合いになっていくわけです。

「エシカル」に、ただ唯一の正解はありません。その人自身の選択の基準、選んだものが、環境、社会、地域どんなところに配慮され、貢献しているものなのか、どの価値観を優先させるかは、人それぞれ違って当然です。例えば、発展途上国の人たちの生活を応援したいと思っているのであればフェアトレードの洋服を購入する。気候変動問題を大事に思っているのではあれば、国産の地産地消で作られた洋服を買う。ゴミを増やしたくないのであれば、リユースをしながら長く使い続ける工夫をするなど…。

どんな活動もどこかで矛盾が生まれてしまうもので、壁にぶつかることもあります。そのときに「エシカルファッションを続けるのは難しい」とあきらめてしまうのではなく、自分が選ぶもののもたらす影響を考え「どうしたらもっと良い影響を作れるのか」と考え続けていくことが大切なことだと思っています。

日々の暮らしの中でできる「7R」のすすめ

環境に配慮したエシカルブランドの洋服を買うことだけが、エシカルファッションではありません。エシカルファッションをライフスタイルに取り入れる7つのアイディアを堀田さんに教えていただきました。

①Rethink-リシンク 
自分の暮らしを見つめ直す。本当に必要なものは何か考える。

②Refuse-リフューズ
過剰包装など必要のないものは、理由を添えて断る。

③Reduse-リデュース
ゴミや持ち物を減らす。受注生産の洋服を買う。

④Repair-リペア
修理して使い続ける。

⑤Reuse-リユース
使えるものは繰り返し使う。他人に使ってもらってもいい。

⑥Repurpose-リパーパス
目的を変えて使い続ける。リメイクやアップサイクルとも言う。

⑦Recycle-リサイクル
資源として再利用する。

①Rethink-リシンク

自分の暮らしを見つめ直す。本当に必要のものは何か考える。

堀田 まずは、クローゼットの中身をすべて見てください。その結果、服選びの傾向やクセが見えてきて「本当に必要なもの」がわかります。エシカルブランドの洋服を買うにしても、本当に必要なものでなければ着ない服を増やだけです。エシカルファッションを始めるうえで「Rethink-リシンク」は、まず最初に行っていただきたいとても大切なアクションです。
 

まずは、クローゼットの中身とじっくり向き合うことから始めましょう。
まずは、クローゼットの中身と向き合うことから始めましょう。

②Refuse-リフューズ

過剰包装など、必要のないものは理由を添えて断る。

堀田 商品の過剰包装を断ることは、気候変動対策や紙・プラスチックごみの削減につながります。リフューズの場合、お買い物のの際に相手方の企業や店舗に過剰包装を断った理由を伝えることも大切です。過剰包装を断る声が増えれば、自分の好きな店舗やブランドがエシカルな一歩を踏み出してくれるきっかけになるかもしれません。

ネット通販の場合は備考欄に下記の文面を書き添えておくと良いと思います。

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件名:包装の簡易化をお願いいたします。
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気候変動対策や紙・プラスチック類などによる包装の削減をお願いできたらうれしいです。
以下、可能な範囲でご対応いただけましたら助かります。

・納品書やチラシ、カタログ、ショップカード、過剰な緩衝材などは不要です。
・緩衝材が必要な場合は、古紙や古新聞で結構です。
・すでにパッケージされている商品はプラスチック袋には入れず、箱に直接入れていただいて構いません。
・ダンボールも含めて、包装資材はなるべく再利用品や古紙をご活用ください。

③Reduse-リデュース

ゴミや持ち物を減らす。受注生産の洋服を買う。

堀田 アパレル業界での問題のひとつが、大量生産・大量消費・大量廃棄です。フェアトレードのオーガニックコットンで作られたエシカルな洋服だからといって大量生産をしていては、本末転倒になってしまいます。「売れなかった洋服はリサイクルすればいい」という考え方もありますが、リサイクルをする時にも二酸化炭素が発生するため、エシカルという観点では全体の生産量を減らしていくことが理想です。

最近では受注生産で洋服を販売するブランドも増えています。エシカルな活動を行っているブランドを応援するためにも、受注生産のシステムを利用することはとてもすばらしいことだと思います。

\受注予約販売をするエシカルブランド/
●「Enter the E」(エンター・ザ・イー)
人や環境に配慮した洋服だけを届けるエシカルファッション専門のしセレクトショップ。「スローファッション」を提唱し、商品はその場で買えるものと受注を受けてから仕入をする受注商品で構成。在庫を持たない形でアパレル産業の衣類ロスに取り組んでいます。
https://store.enterthee.jp/

④Repair-リペア

修理して使い続ける。

堀田 今持っているものを長く使い続けるためには、直して使うことも必要です。売るだけでなく長く使い続けるための修理サービスまで提示していたり、着なくなった洋服を再生(リサイクル)するために回収してくれるブランドで洋服を買うこともエシカルファッションを始める第一歩になります。自分でできることのひとつとしてダーニングという修繕方法がありますので、それを実践されるのも良いと思います。

\エシカル先進ブランドの修理サービス/
●「パタゴニア」
「消費を減らし、必要ないものは買わない。次は修理。まだ使えるものは直して使う。または再利用したり、共同使用することもできる。そしてついにこれらの選択肢がなくなったとき、リサイクルすること」というメッセージを発信する、エシカル先進ブランド。メーカーでの修理対応はもちろんのこと、自宅でのメンテナンス方法をオンラインで公開しています。
https://www.patagonia.jp/jp-repairs.html

\ダーニングを素敵に仕上げるコツ/

⑤Reuse-リユース

使えるものは繰り返し使う。他人に使ってもらうのでもいい。

堀田 古着をフリーマーケットやリサイクルショップで選んだり、いらなくなったものを必要とする人にプレゼントして繰り返し使い続けることも大切です。お母さまが使っていたバッグなどを受け継いだり、おばあさまが使っていた帯留をアクセサリーにするのも良いですよね。私の場合、お気に入りのセーターが毛玉だらけになってしまったら、毛玉取り器とスチームアイロンを使ってお手入しながら、長く着続けています。

\シミや色落ちした洋服は、染め直して使う/
●「LITMUS Indigo Studio Japan」(リトマス インディゴ スタジオ ジャパン)
色落ちやシミ汚れがついたニットやレザーが、伝統工芸の藍染技術で美しい「ブルー」に生まれ変わります。
http://litmus.jp/

⑥Repurpose-リパーパス

リメイクやアップサイクルなど、目的を変えて使い続ける。

堀田 使わなくなった洋服や着物の帯を使ってバッグに作り替えるなど、デザインや技術のチカラで新たな価値を生みます。「リパーパス」「リメイク」「アップサイクル」といったキーワードで調べると、これらのサービスを行っているブランドやショップ情報が出てきます。こうしたブランドを応援していくこともエシカル消費の一つですので、ネットで検索してみてください。

⑦Recycle-リサイクル

資源として再利用する。

堀田 リサイクルは洋服を溶かしたり形状を変える必要がありますので、個人でできるアクションではありませんが、海洋ゴミとなったペットボトルを繊維にして洋服やバッグに生まれ変わらせているエシカルブランドもあります。そういったブランドの製品を買うことは、海をきれいにする活動にもつながっていきます。

\ペットポトルなどをリサイクルした生地を使用/
●ECOALF(エコアルフ)
すべてのアイテムを再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで作っている、ヨーロッパ発のサステナブルファッションブランド。ペットボトル、漁網、タイヤなどを独自の技術でリサイクルして生地を開発し、スタイリッシュで機能的なコレクションを創り続けている。洋服だけでなく、バックなどの雑貨やスニーカーなどもあります。
https://ecoalf.jp/

\コンビニでもリサイクルポリエステル商品が買えます/
●「ファミリーマートのConvenience Wear(コンビニエンスウェア)」
「いい素材、いい技術、いいデザイン。」というコンセプトのもと、女性用のキャミソールなどに環境に配慮したリサイクルポリエステルを使用。
https://www.family.co.jp/goods/cw/7420368.html

「エシカルファッション」を長く楽しむコツは?

--まずはできることから始めるというスタンスでも良いのでしょうか?

堀田 楽しく続けることが大切ですので、できることから始めるので良いと思います。好きなブランドでエシカルな製品が見つからなければ、そのブランドに「環境に配慮された製品を作ってもらえませんか?」とリクエストするなど、声をあげていくことも大切なことだと思います。

私たちが安心して生活できる「持続可能な社会」の実現に向けて、小・中・高校の学校教育に「エシカル消費」が組み込まれ、数年後には「エシカル」のものさしを持った人たちが社会の中心になる時代がやってきます。時代の波に乗り遅れないためにも、変化を楽しみながら「エシカルな暮らし」を初めてみてはいかがでしょうか?

最後に、おしゃれなエシカルファッションブランドを紹介します!

おしゃれで、高品質なエシカルファッションブランドを堀田さんに教えていただきました。

●「People Tree」(ピープルツリー)
フェアトレード専門ブランド。フェアトレード・ファッションの世界的パイオニアであり、エシカルで地球環境にやさしく、サステナブル(持続的可能)なファッションを、約30年に渡ってつくり続けています。
https://www.peopletree.co.jp/

●「CASA FLINE」(カーサフレイン)
伝統工芸の職人によるものづくり、環境に配慮した素材、地産地消による国内産業の活性化などエシカルな観点で、1着の洋服ができるまでのストーリーを大切に伝えてくれるアパレルブランドです。
https://casafline.com/

●「Allbirds」(オールバーズ)
シューレースにはペットボトルの再生プラスチック、主な原料が石油だったソールには植物性の材料を使用。スニーカーを作る過程で発生した、二酸化炭素排出量まで明記しているシューズブランドです。軽くて使い心地が良く、洗濯機で丸洗いでき、汚れたら藍染で染め直すこともできます。
https://allbirds.jp/

●「Offen」(オッフェン)
シューズのアッパー部分にペットボトルリサイクル糸を使用。梱包には、箱を使わず水洗いができるほど丈夫な再生紙を使うなど、環境に配慮したモノづくりをしているシューズブランドです。
https://offen-gallery.com/about/


※記事の情報は2022年3月28日時点のものです。
 

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