デートや会議、大切な日の前に飲みたい「こころ漢方」のススメ

話題の美容情報について紹介する連載「最新美容キーワード」。第2回目は「こころ漢方」です。漢方は中国から伝来し、日本で発展した伝統医学。病気になる前の不調「未病」の状態を改善する予防医学としても注目されています。こころやカラダの不調を整える漢方の知恵や大切な日に万全の体調で臨むために飲んでおきたい漢方薬などについてご紹介します。

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こころの不調は「気」のバランスの乱れ

まずは『鎌倉・大船の老舗薬局が教える こころ漢方』の著者で創業70年を迎える老舗漢方薬局の三代目でもある杉本格朗さんに、「こころの不調」と「気」の関係についてお話をうかがいました。
 

-不調の中でも特に「こころ」に注目されていますね
 
日々薬局でお客さまのお悩みを聞いているなかで、「こころの不調」を抱えている人が多いことが気になっていました。「なんとなくイライラする」「カラダがだるい」など、「なんとなく調子が悪い」ことは誰にでもあるのだから…とつい我慢してしまのです。この「こころの不調」をそのままにしておくと、カラダにも影響がでてきます。仕事や家事、人間関係とストレスになるものがたくさんある世の中だからこそ、自分のカラダの声を聞いて、早めに対処して欲しいと思ったのです。

-不調を知る手がかりとなる「気」とは?
 
「気」は東洋医学や漢方の考え方において、とても重要なキーワードです。漢方相談では「気が不足してます」「気を補いましょう」とアドバイスすることが多いです。

この「気」とは何か? 一言でいうと生命活動に必要なエネルギーのようなものです。どことなくあやしいイメージがあるかもしれませんが、日本語には「人気」「元気」「気力」「気を遣う」など「気」を使った言葉がたくさんあります。目には見えないけれど生きていくうえで欠かせないものだということを、無意識に感じているのではないでしょうか?

漢方では人の体は「気・血・水」という3つの要素で成り立っていると考えられています。「血流」が悪くなることで「冷え」や「生理痛」などにつながることから、女性は「血」を意識している人も多いと思います。どの要素が弱いかは人によって違いますが、一つでも弱るとバランスが乱れ、こころとカラダに不調が現れます。健康なこころとカラダを保つには、「気・血・水」の3つを整えることが大切です。

気・血・水

〈気・血・水とは?〉
 
「気」…生命活動の源 
【バランスが崩れることで起きる不調】不安やイライラ、疲れやすさなど

「血」…血液とその中に含まれる栄養
【バランスが崩れることで起きる不調】肌荒れ・貧血 生理痛など

「水」…リンパや汗など血液など体液
【バランスが崩れることで起きる不調】むくみ・めまい。頭痛など

 
-「気」のバランスが乱れているとどんな症状があらわれますか?
 
気は不足している状態と滞っている状態の2種類に分かれます。不足している状態を「気虚」、滞っている状態を「気滞」といいます。「気虚」の場合には「だるい」「疲れやすい」「風邪をひきやすい」などの症状があります。「気滞」の場合は「ため息やゲップ」「おならが多い」「ストレスを感じる」ことがあります。気の滞りがひどくなると、気が逆流して「気逆」になります。「気逆」になると喉が詰まったような感じになり「イライラ」「のぼせ」「動悸」などを感じることがあります。
 
-「気」のバランスを整えるのにはどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?
 
気の乱れを整えるには十分な栄養と睡眠、休息、ストレスの発散が欠かせません。また、気は「感情」と互いに影響しあっていますので、自分が今どんな状態でどんな気持ちになることが多いかを意識するのも大切です。漢方の世界では感情を「怒」「喜」「「思」「憂」「悲」「恐」「驚」の以下の7つに分けています。

●怒…怒ったときには気は頭のほうに昇ります。
●喜…喜ぶと気はゆるみます。
●思…深く考え込むと気は詰まります。
●非・憂…悲しみは気を失わせます。
●恐…恐怖を感じると気が下がります。
●驚…驚きすぎると気が乱れます。

考えこんで気が詰まってしまったときには、こころがリラックスできることを積極的に行って気をゆるめるように調整していきましょう。
 

「週末漢方」と「シチュエーション別漢方」のススメ

―漢方薬は「価格が高い」「長期間続けないと効果がでない」というイメージを持つ人も多いようですが?
 
漢方薬は漢方医学に基づき、薬効のある天然物である「生薬」を組み合わせた医薬品です。西洋薬のように病気そのものにアプローチするのではなく、気の乱れなど不調の原因になっている体質や心身の状態を整えるという考え方で処方されています。体質を改善するのには程度の時間がかかるため、「長く飲まないと効果がない」というイメージがあるのかもしれません。痛みなどの強い症状がある場合は毎日に服用するのが理想ですが「なんとなく体調がすぐれない」という程度なら、週末だけ服用して平日に溜まった疲れを解消する「週末漢方」という方法もあります。

例えば、寝る前に「朝鮮人参」や「ナツメ」のお茶、「牛黄(ごおう)」を飲むと眠りの質が上がり、疲労回復につながります。週末に暴飲暴食をしてしまった場合には、胃や肝臓を休める「山梔子(さんしし)「ガジュツ」「田七人参」などを。便秘気味の人は「大黄(だいおう)」「アロエ」「センナ」などで腸をスッキリさせておくのもいい方法です。週末だけなら費用も抑えられますし、お悩みにぴったり合えば短期間でも効果を感じることができます。
 

店内の様子
生薬が並ぶ店内。最近では若い女性の相談も増えているそう

―著書の中では「デートの前」「プレゼンの前」などシチュエーション別の漢方の使い方も紹介されていますね
 
漢方は不調の時だけでなく、「大切なデートまでに肌の調子を整えたい」「飲み会の前に二日酔いを防止したい」など、日々のメンテンナスとしても活用できます。私も音楽フェスに行く前や飲み会の前など漢方薬を飲む習慣があります。より良い状態でイベントや仕事に向かうために漢方薬をポイント使いするのもおすすめです。

●大切なデートの前におすすめの漢方
「紫河車(しかしゃ)」という現代でいうプラセンタのような効果のあるものや、滋養強壮によい「瓊玉膏(けいぎょくこう)」などがあります。大切なデートがある1~2週間前から飲んでおくとよいと思います。

●大切な打ち合わせや会議の前におすすめの漢方
頭をすっきりとさせ、思考をクリアにする漢方があります。「イチョウ葉エキス」「羚羊角(れいようかく)」「遠志(おんじ)」「サフラン」などがおすすめです。

●二日酔い対策におすすめの漢方
「牛黄(ごおう)」と漢方胃腸薬を合わせて飲むのがおすすめです。

特に慢性的な不調がない場合にはこうした目的別で漢方を服用するのもいいと思います。どのような漢方がいいかは個人の体質によっても違うので、ぜひ、お近くの漢方薬局で相談してみてください。
 

薬膳茶
杉本さんは薬局オリジナルのお茶など、手軽に漢方を試せる商品も開発しています


 

疲労回復、イライラ解消。簡単「薬膳茶」のつくり方

漢方薬まではちょっと…という人は漢方の知恵を取り入れた「薬膳茶」を試してみませんか?スーパーなどでも購入できるスパイスや生薬(和漢植物)を使って手軽に作れる「薬膳茶」をご紹介します。

●ミントティーのつくり方 ※1人分
ハッカ(ミント)には目や頭の熱を取ってくれる働きがあります。気管支や目に効くクコの実を加えることで疲れた体が癒されます。お好みでお砂糖を入れてもおいしくいただけます。
 

ミントティー

<材料>
●ジャスミンティーまたは凍頂烏龍茶 2~3g(ティーパック1包でもOK)
●生薬(和漢植物)
 ハッカ(ミント)0.2~0.4g(生の葉の場合0.5g)
 クコの実 3個

<作り方>
①市販の出汁袋にジャスミンティーまたは、凍頂烏龍茶とハッカ(ミント)を詰める。
②カップに①を入れて熱湯を注ぎ、2~3分待つ。ハッカ(ミント)は熱に弱いので出来上がったらすぐに取り出す。
 

この方にお聞きしました

杉本格朗さん

創業70年を迎える老舗漢方薬局の三代目。日々、薬局でお客さんに漢方を処方するかたわら、漢方を身近に感じてもらうためにイベントなども開催。和漢植物を使ったオリジナルのお茶や薬膳酒のワークショップなども行っている。

杉本格朗さん


『鎌倉・大船の老舗薬局が教える こころ漢方』
著:杉本格朗 
出版:山と渓谷社


 
「イライラする」「落ち込んでいる」「気疲れしている」「ショックを受けた」など、 13の心の不調を老舗漢方薬局の三代目・杉本格朗先生が漢方の知識で解決。デートの前に、大切なプレゼンの前に…など「シチュエーション別の漢方の服用術」なども紹介。

※記事の情報は2019年6月18日時点のものです。

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