台湾式朝ごはん「シェントウジャン(鹹豆漿)」の作り方を台湾通料理家が伝授!
日本でも人気高まる台湾の定番朝ごはん「シェントウジャン(鹹豆漿)」の作り方を、台湾の食文化に詳しい料理家の山脇りこさんに教えていただきました。必要な材料は豆乳と酢と塩。5分でできるレシピなので忙しい朝にも無理なく作れます。
この方にお聞きしました
山脇りこ さん
料理家。代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰し、3分クッキング(NTV)や、あさイチ(NHK総合)をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌などでも活躍。旬を大切にし、作り方はシンプルに、調味料はいつものさしすせそで作る家庭料理に、海外生活や旅で得たモダンなエッセンスを加えて、“作る楽しみ”とともに提案。
また、1989年にはじめて台北を旅し、台湾に魅了され、台湾中で食べ歩き、市場を回り、台湾人のママたちに家庭料理を習うようになる。著書『明日から、料理上手』(小学館)が台湾で翻訳出版されたのをきっかけに、台湾でも料理教室を開催し、日台の食をつなぐ仕事にも携わっている。台湾愛がつまった初のガイドブック『食べて笑って歩いて好きになる 大人のごほうび台湾』(ぴあ)や『台湾オニギリ』(主婦の友社)も好評。
台湾の食や文化が大好きで、これまで数えきれないほど台湾を訪れたという料理家の山脇りこさん。
仕事柄、料理教室や執筆活動を通じて台湾の食文化を日本に紹介するのはもちろん、台湾でも日本の家庭料理を教える教室を開催するなど、日本と台湾の食文化の懸け橋として積極的に活動を行っています。
そんな台湾愛溢れる山脇さんが10月に刊行したのが、台湾で食べたスープの味を日本の食材を使って再現したレシピブック『台湾スープ』(誠文堂新光社)です。
この本には、最近日本でもジワジワ人気高まりつつある「シェントウジャン(鹹豆漿)」の作り方も紹介されています。
そこで山脇さんに、台湾の食文化の魅力や現地で食べた絶品シェントウジャンの話をうかがいつつ、日本のキッチンでの作り方のコツなどを詳しく教えてもらいました。
台湾は「美味しいもの」にひたすら貪欲な国
―そもそも山脇さんが台湾にハマったきっかけは?
山脇 私はもともと長崎出身なんですが、地元には豚の角煮など長崎の中華街から発祥した家庭料理がたくさんあるんですね。それで、台湾の南にある台南地方に初めて行ったときに、現地で食べた角煮が長崎の角煮の味とほとんど一緒で。
長崎の中華街は中国・福建省出身の人が大勢いるのですが、台湾(特に台南)も福建出身の人が多く、福建の食文化が伝わっていると知ったんです。それで私の郷土愛が燃えたというか、台湾って長崎とつながりがあるのでは?と思って。それが、台湾が気になりだしたきっかけです。
その後も、旅行や仕事で台湾に行くたびに「なんで台湾の人ってこんなに優しんだろう? 日本人にここまで親切にしてくれるんだろう?」と思うことがたくさんあって。そういう台湾の人の温かさをただ受け取るだけで終わらせたくないと思ったのが、私が台湾の魅力を日本で発信したいと思った理由ですね。
―料理家の山脇さんから見て、台湾の食文化の面白さはどこにありますか?
山脇 まず大前提として台湾は共働き家庭が多いので、実は家であまり料理をしません(笑)。朝ごはんも晩ごはんも、屋台で食べたりお店で買ってきたりが普通です。自分で作るより外で食べたほうが美味しいというのもあると思います。
ただ、なかには料理に並々ならぬ情熱を傾ける人たちもいて。屋台や店を切り盛りする人たちもそうです。こんな面倒なことをやるんだ!って驚くくらい、美味しくするためなら妥協しない。
例えば肉にしても、日本人からすると骨なしのほうが調理もしやすいし食べやすいと思いますが、台湾ではほとんど肉は骨付きで売っています。骨からダシが出るし、骨付きのほうが日持ちもするんですよ。
そういう風に「美味しいために」というのが一番。「簡単だから」とかそういうことじゃなくて。美味しい状態で売るし、美味しい状態で食べる。そのこだわりは、すごく感じますね。
―とにかく「美味しい」が正義なんですね。
山脇 そうなんです。あと『台湾スープ』の本にも書いたんですが、台湾はうまみの掛け算がすごい。日本のお出汁は、例えばかつおと昆布のように、2種類のうまみ成分を掛け合わせるのが一般的。でも台湾だと、そこにさらに豚も入れて、魚の骨も入れて…と、うまみをどんどん重ねていく発想。そこが面白いところです。
一方で台湾料理の味付けは、「しょっぱすぎない、甘すぎない、強すぎない」のが特徴です。例えば豆花などの台湾スイーツにしても、フランス菓子に比べると甘さ控えめで、いくらでも食べられそうな優しい味。
食材からうまみをとことん引き出す分、味付けは抑えめ、そういう滋味深い味わいが台湾料理の特徴だと思います。
人気急上昇中! 台湾の朝専用スープ「シェントウジャン(鹹豆漿)」とは?
―最近日本でも専門店ができるほど人気の「シェントウジャン(鹹豆漿)」、そもそもどういった食べ物なんでしょうか?
山脇 シェントウジャンは台湾の朝の定番メニューで、私も現地に行くと必ず食べます。
「トウジャン(豆漿)」は豆乳のことで、そこに「シェン(鹹)」が付くと「塩味の豆乳スープ」という意味になります。もともと中国大陸の北の方から伝わってきたスープのようです。
―台湾の豆乳は日本のものと同じ味なんですか?
山脇 日本の豆乳を少し水で割った感じで、台湾の豆乳のほうがサラサラしているんですが、日本のものより豆腐の味がしっかりします。おそらく豆腐の副産物としてというよりは、豆乳そのものを作る目的で大豆を使っているからでしょう。
サンドイッチ屋さんにしろハンバーガー屋さんにしろ、どこの朝ごはん屋さんでもトウジャンは売られていて、少し砂糖で甘味をつけた温かいトウジャンを飲んでいる人が多いです。ただ、塩味の豆乳スープ「シェントウジャン」になると、置いてある店とない店がありますね。
―シェントウジャンの味付けは塩だけなんですか?
山脇 基本は塩とラー油でシンプルに味付けします。あと酢を入れるんですが、これは味付けのためというより、酢を入れることで豆乳を分離させてほろっとした食感を出すためです。
―ということは、シェントウジャンも素材の味を楽しむスープなんですね。よく一緒に添えてあるパンのようなものは?
山脇 「油條(ヨウテャオ)」と呼ばれる揚げパンで、外はサクサク、中はフワっとしています。現地では、油條をシェントウジャンやトウジャンに付けて食べるのが定番の定番スタイルです。
現地でしか食べられない絶品シェントウジャンの味
―台湾で食べたシェントウジャンで、山脇さんにとって印象深い味はありますか?
山脇 『台湾スープ』の本でも少し触れていますが、台北に「青島豆漿店」というトウジャンで人気のお店があって、ここのシェントウジャンが炭の香りがして、本当に美味しいんです!
せいぜい120円くらいの食べ物なのに、おじいちゃんが毎朝一生懸命炭火を起こして作っていて、大変だよな、ガスにしちゃえばいいのにと思うんですけど、ガスにしちゃったらきっとその店の味ではなくなるんですよね。
―現地のその店でしか味わえないシェントウジャンなんですね。
山脇 そうですね。こればかりは、そのお店でしか味わえません。だから、いつ行ってもこの味を求める人で朝から行列ができています。
ただシェントウジャン自体は、とっても簡単にできる素朴なスープ。必要なのは豆乳と塩と酢、あとは好みでラー油があればできます。忙しい朝でも気軽に作れますよ!
山脇さん直伝レシピで「シェントウジャン」を編集部員が作ってみた!
【山脇さんからのアドバイス】
豆乳を上手にほろっとさせるコツは、豆乳を鍋で温める際に沸騰させ続けないこと。ポコポコと1回沸いたら、すぐに火を止めてください。
『台湾スープ』の本では油條の作り方も紹介していますが、もっと簡単に、素焼きした油揚げを添えるのもおすすめです。
それから、台湾の味ではないのですが私のアレンジアイデアとして、塩の代わりに味噌を豆乳に溶かしても目先が変わりますし、シェントウジャンの中にお豆腐を入れて、湯豆腐風にしても美味しいですよ!
・基本のシェントウジャン
材料
- (2人分)
- 豆乳(無調整) 250ml
- 米酢 小さじ1
- 塩 2つまみ(味見して調整)
- パクチー 1~2本
- ラー油 適量
- 油揚げ 1枚
【下準備】
油揚げは適当な大きさに切り、フライパンに油をひかずに焼くか、トースターやグリルでパリッとするまで焼く。
【1】小鍋に豆乳と米酢、塩を入れて中火にかける。
【2】沸いたら火を止める。2~3分で分離してほろっとしてくる。
【3】器に盛り、ラー油をかけてパクチーを添える。焼いた油揚げといただく。
\ 食べてみた!/
ほろっととろける豆乳の甘味に、ほのかな塩味とラー油のマイルドな辛味。シンプルで優しい味付けなのに、驚くほど奥深い美味しさ。朝の目覚めたての体にジワジワ~っと沁みてきます。こんなスープで一日を始められたらサイコーです!
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今回ご紹介したシェントウジャン以外にも、山脇りこさんの『台湾スープ』の本には日本の食材で台湾の味を楽しめるレシピが多数収録されています。
海外旅行はしばらくお預けの今、ぜひキッチンで好吃(ハオチー)な台湾気分を味わってみてください!
「台湾スープ ぜんぶ日本の食材でできる! おうちで味わう台湾気分」
・著者:山脇りこ
・出版:誠文堂新光社
・価格:1,540円(税込み)
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※記事の情報は2020年12月15日時点のものです。
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