【ホルモンの焼き方】美味しさが2倍になる方法を焼肉の達人に聞きました
ぷりぷりとした食感や脂のうまみが魅力のホルモン。焼肉屋さんでも人気のメニューですが、「ホルモンの焼き加減がわからない」と迷う人も多いようです。美味しさがアップするホルモンの焼き方を焼き肉の達人に教えていただきました。
この方にお聞きしました
松浦達也さん
調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、料理誌・一般誌・新聞・書籍・WEBまで幅広く執筆・編集を手がける。テレビ等で食トレンドやニュース解説も行い、ビジネス書からサブカルチャーまで広範囲の企画を仕立てる。著書『家で「肉食」を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』『教養としての焼き肉大全」など。
ホルモンの焼き加減のポイントは、部位の特徴を知ることから
―――ホルモンにはどんな種類があるのでしょうか?
松浦 ホルモンとはいわゆる「内臓」のことで、心臓や肝臓などの〝赤モツ〟と胃や腸などの〝白モツ〟に分けられます。〝赤モツ〟はハツやレバー、〝白モツ〟は ホルモン(コプチャン、ホソ、ショウチョウ)、シマチョウ(テッチャン、ダイテツ)やミノなどが代表的な部位ですね。
――ホルモンならではの美味しさとはどのようなものでしょうか?
松浦 ホルモンは淡泊で食感や脂の旨味を楽しむものだと思います。味の特徴は部位によってそれぞれ違いますが、例えばシマチョウは脂の甘み、ハツやハラミはザクッとした力強く筋繊維を感じさせる歯ごたえが魅力です。脂の風味を除くとホルモンは食感が印象的で味わいは淡泊なものが多いのですが、「ギアラ」はブリッとした歯ごたえと濃厚な味わいが楽しめる部位ですね。
▼ホルモンの部位
――ホルモンの焼き加減が分からないという人も多いようですが、正しい焼き方というのはありますか?
松浦 ロースやカルビなどの生肉と比べるとホルモンは火が通っているかどうかが分かりにくいので、焼きすぎて焦げしてまったり、思っていたよりレアだったなど「食べ頃」が分かりにくいかもしれませんね。主に食感を楽しむ部位なので、適切な焼き方をすることでホルモンの美味しさは2倍にも3倍にもなります。「なんとなくこれくらいかな…」で焼いていた人は驚くと思いますよ。ぜひ、試してみてください。
ホルモンの焼き方のポイント。「炭火」か「ガスロースター」か?
――ホルモンを美味しく食べるには炭火、ガスロースターどちらがいいのでしょうか?
松浦 焼肉業界では「ガスロースター」「炭火」どちらがいいのかは永遠の課題です。ホルモンに特化した場合には炭火がおすすめですね。脂の多い部位(シマチョウなど)などは皮目(腸壁)の水分を抜いてパリッと仕上げるのがポイントなのですが、炭火はこれに向いています。
松浦 なぜ、炭火のほうがパリッと仕上がるのか? その違いは熱のあたり方にあります。水分を抜きながら皮目をパリッと焼き上げるには網の上のどこが最適な温度か見極める必要があります。七輪の場合、輻射熱(ふくしゃねつ・温度の高い物体から放出される電磁波を受けて生じる熱のこと)で全体が温まるので、肉の下部、つまりホルモンの皮目側にまんべんなく熱があたります。網の上では中心部が最も温度が高く、外側にいくほど温度が低くなっていきます。ホルモンの部位に合わせた適切な温度を見極めて肉を配置すれば、簡単に美味しく焼くことができます。
対してガスロースターのセンター部分は、直接鉄板に触れている部分以外は伝導熱が強く伝わらず水分が抜けきれないことがあり、「クニュッ」とした食感の悪い部分ができてしまう可能性があります。
松浦 ガスロースターに向いているのは、赤身です。スリットが入っているセンター部分は焼き目はつきますが、火が入りすぎないので加熱すると縮みやすい赤身も美味しく仕上がりやすいのです。
ホルモンの焼き方 部位別①シマチョウ
松浦 ホルモンの中で焼き方に迷う人が多いのが「シマチョウ」だと思います。お店によってはコプチャン、ホソなどとも呼ばれ、どこの焼肉屋さんにもある部位です。皮目(腸壁)と脂がたっぷりとついた面があり、焼く時は中弱火くらいの場所(網の外側の位置)で、皮目を下にしてじっくりと水分を抜くように焼いてきます。皮目全体の水分が抜けてパリッとして、焼き目がつき、脂身が半透明になったら返します。脂身を軽く温めたら食べ頃です。
焼きの時間は皮目8~9割、脂1~2割程度。熱を加えても極端に縮んだりしない部分なので、じっくりと時間をかけて焼くのがポイントです。「焼き目」と「焦げ」は違うので、焦がさないように様子を見ながら丁寧に焼いてください。
\焼いてみました/
編集部 いつも焼き加減が分からず表面が焦げてしまうシマチョウ。網の外側のほうの中弱火でゆっくりと火を通したところ、表面は香ばしく焼きあがり、プリッとした食感と甘味を感じました。最適な焼き方を知る前と後での美味しさの違いを実感。
ホルモンの焼き方 部位別②ミノ
松浦 牛の第一胃。肉厚でコリコリとした食感が特徴で、お店によっては格子状に包丁を入れているところもあります。焼いても縮みが少ないので、中火(網の中心部よりやや外側)でマメに返しながら火が強いかなと思ったら一番外側の弱火の部分で「休ませながら」焼いてください。マメに返すのが面倒な場合には中弱火(網の外側に近い場所)でじっくりと火を通すのもおすすめです。どちらの場合も表面が乾いてきて、焼き色がついたら食べ頃です。
サンドイッチのように間に脂身が挟まれた「ミノサンド」は胃壁の部分の水分をじんわり抜きながら、脂をほどよくとろけさせるのがコツです。
\焼いてみました/
編集部 焼いてみたのは脂身が間に入っている「ミノサンド」。焼き目を付けた後は中心より外側の「中弱火」あたりでじっくり焼いてみました。とろける脂とミノらしい歯ごたえ。これは美味しい!
ホルモンの焼き方 部位別③センマイ
松浦 センマイは第三の胃。コリコリした食感が特徴です。生で提供されることは少なく、ゆでるなど下処理されて出てくることが多いので、火を通す程度で大丈夫です。細かい突起の部分が焦げると食感が悪くなるので、強火(網の中心部分)で焼き目がついたらOKです。
\焼いてみました/
編集部 網の端のほうで休ませつつ焼いてみました。焼くことで丸みを帯びた形になり、ジューシーで肉のうまみも感じられました。
ホルモンの焼き方 部位④ギアラ
松浦 ギアラは第四の胃。皮目から中火(網の中心部よりやや外側)で転がすように焼き時間をかけて焼き目をつけていきます。生の時にはだらっとした平たい形状ですが、焼くと膨らんできます。全体にぷっくりしたら焼き上がりです。ギアラは上手に焼くと味と香りが一段膨らみます。ブリンッという心地いい歯ごたえと濃厚な味はお肉好きな人にはぜひ食べてほしいですね。味・食感・脂、全部が楽しめます。
\焼いてみました/
編集部 網の端のほうで休ませつつ焼いてみました。焼くことで丸みを帯びた形になり、ジューシーで肉のうまみも感じられました。
ホルモンの焼き方 部位別⑤ハツ
松浦 ハツは心臓ですが、味わいは赤身のお肉に近いですね。焼いても身が縮まないので焼き肉でも美味しく食べられる部位です。新鮮なものなら中火で返しながら焼いてミディアムに仕上げるのがおすすめです。ごま油をもらって表面に油をつけながら焼くとくっつき防止にもなり、しっとり仕上がります。ハツは個体差が少なく品質が良いものが多いので焼き方にはそれほど神経質にならなくても大丈夫です。
\焼いてみました/
編集部 ハツは「ハツ刺し」で食べることが多かったのですが焼いてみると、弾力のある歯ごたえとお肉のうまみが感じらました。「焼くと硬くなるのでは?」と心配でしたが、火と通しすぎない焼き方で美味しくいただけました!
ホルモンの焼き方 部位別⑥レバー
松浦 ハツとは対照的には焼き方間違えると美味しさが台無しになる部位です。火をいれると香りが強くなることから「臭みやボソボソとした食感が苦手」という人も多いですよね。そうならないためにはじわじわ火をいれること。中心を60度くらいに上げていくイメージで、網の上では強火で焼目をつけてから低温の外側の端で熱を加えます。安全のためには火を通すことは大切なのですが、いわゆる「良く焼き」をしてしまうと、パサついてボソボソした食感になります。難度は高いですがミディアムくらいの仕上がりを目指してください。ハツ同様、ごま油をまとわせてから焼くと表面も乾燥せずにやわらかく焼きあがります。
\焼いてみました/
編集部 ごま油をつけながら焼いたのは初めてでしたが、確かにパサついた感じがなく、食べやすかったです。脂身と違って焼き頃の見極めが難しいので弱火でじっくり火を通した方が失敗がなくていいと思いました。
ホルモンの焼き方が大切! 丁寧に焼くと美味しさがアップします
思っていた以上に奥深い「ホルモン」の世界。ホルモンは正肉よりも「焼き方」によって素材のポテンシャルを引きだせる部位だとか。教えて頂いた方法で焼いてみたら、食感が良くなりうまみもしっかり感じられました。少し手間はかかりますが、丁寧に焼くと美味しさが確実にアップします!ぜひ、みなさんも試してみてください。
※この記事の情報は2022年9月9日時点のものです。
- 1現在のページ